厚木市セーフコミュニティ 外傷サーベイランス委員会
委員長 渡辺 良久

(東海大学医学部基盤診療学系 衛生学・公衆衛生学 客員准教授)

1. 統計学的「検定」とは

 セーフコミュニティでは、「科学的根拠」が重要とされていますが、科学的根拠とは単に統計データを示すという意味ではありません。統計学的に「検定」をかけて、差があるかどうかを示すことが重要です。検定の手法は多数ありますが、比較的容易な手法は、比率の違い(多い、少ない)の検定には「カイ二乗検定」、平均値の違い(高い、低い)の検定には「t検定」、推移の分析(増加、減少)には「相関係数の検定」などが挙げられます。また、標本数が少なすぎると、差は分析できません。アンケートなどばらつきが大きい調査で300件以上、指定統計などで1,500件以上の標本数が望まれます。

2.今子どもたちに起きていること

 厚木市救急搬送状況を平成17年~令和3年の間で分析すると、0~14歳では交通事故が減少しています。一方、自宅での一般負傷が増加しています。また、12~14歳の男子では運動競技が増加傾向、12~14歳の女子では自損行為が増加傾向となっています。厚木市のようにセーフコミュニティを10年以上続けてくると、当初の外傷の状況と現在の状況が変化するため、変化に適応して対策を変えるべきです。
 また、厚木市立病院の平成20年~令和3年の外傷患者分析(ICD2桁分類)では、0~14歳の入院では「T78 有害作用、他に分類されないもの」が1位となっており、外来でも2位になっています。その内訳をICD3桁分類でみると、最も多いのは「T781 その他の有害食物反応他に分類されないもの」となっており、T782、T780のアナフィラキシーショックがそれに続きます。その原因物質で多いのは卵と牛乳、次いで小麦、ピーナッツ、そばなどとなっています。
 「外傷」を「ケガ」とだけ思い込むのは判断を誤らせます。「外的な要因による有害作用」と捉えてデータを集め、分析し、対策を立案すべきでしょう。