- 対特殊武器衛生隊等研修会
2020年12月8日(火)
[主催]日本市民安全学会、ベイエリア連携の会
[内容]
令和二年度初頭より、国難である新型コロナウイルス感染症および市民生活への影響等についてオンラインでの研修会等を重ねて参りましたが、このたびリアル研修として、陸上自衛隊の感染症対策の専門部隊である「対特殊武器衛生隊」と、医学情報資料館である「彰古館」研修を実施しました。・対特殊武器衛生隊 第1科長 山口貴史氏
対特殊武器衛生隊の概要と新型コロナウイルス対応における活動の概要、家族支援について、以下の趣旨の説明がありました。
対特殊武器衛生隊は、生物剤攻撃に対応する陸上自衛隊で唯一の専門部隊で、使用された生物剤の同定(種類や型を特定すること)や感染患者の応急治療を行います。隊は、医師・看護師を含む約90名で、生物剤対処用衛生検査ユニットや陰圧病室ユニットなどを装備しています。
新型コロナウイルス対応では、延べ125日間の災害派遣で、ダイヤモンドプリンセス号や成田・羽田空港等において検疫支援や健康管理支援などを行いました。派遣隊員の家族への支援については、長期の派遣による家族の負担や報道の影響、家族への風評などへの対策や共働き世帯を支えるための子育て支援など、きめ細やかな対応をしました。・対特殊武器衛生隊長 101治療隊長 阿部信次郎氏
ダイヤモンドプリンセス号に派遣された阿部隊長から、派遣前に準備したこと、現場での活動や苦労したことなどについて、以下の内容を伺いました。
現場の活動では、PCR検査のための検体採取を実施しましたが、朝晩2回の情報共有会議を実施し関係者間の連携を図るとともに、感染予防のため、ヘアキャップ、フェイスシールド、N95マスク、防護衣や医療用ゴム手袋を装着し、これらの装備に触れる前後には手指のアルコール消毒を実施しました。
また、体力維持を考慮したシフト勤務、使用物品の個別化、全員の個室化、毎日2回の体温測定、感染者との動線分離などを行いました。この結果、派遣隊員から1名の感染者も出すことなく任務を完遂しました。・防護衣等の着脱体験
対特殊武器衛生隊の隊員の皆さまの説明の後に、研修者全員で、防護衣の着脱を実体験しました。隊員から感染しないためのコツを教えていただきながらの体験で、日常生活でも活用できるところがあると思いました。・「彰古館」研修
幕末から明治初期頃の医療器具や症例の記録絵など数多くの大変貴重な医学情報資料があり、広報援護室の鈴木英治氏から各時代の医療についての丁寧な解説を伺いました。特に、明治初期に洋画家の五姓田芳柳が書き残した神風連暴動時刀傷図は、「我が国の戦いでお互いを切り合うような刀傷はこれが最後になる」と記され、貴重な資料には刀傷が緻密な水彩画で描かれていました。また、日清戦争終結後に完成した世界最大級の広島の検疫所が、コレラの感染対策で大きな役割を果たしたことや、日清戦争での戦傷の初期の形成外科手術の記録、その他江戸末期から明治にかけての医療器具の数々など、約1時間の研修では足りないほど多くの貴重な資料が展示されていて、参加者からはまた来たいとの声も聞かれました。
- 教育現場から考えるコロナ危機と新しい日常(ニューノーマル)
2020年9月19日(土)
[主催]日本市民安全学会
[内容]
新型コロナウイルスが拡がる中で、教育現場における感染対策やその問題点や課題などについて、情報交換、意見交換を行いました。まず、東海大学医学部の渡辺良久氏から最近の新型コロナ情勢について基調報告を頂いた後に、学校教育、社会教育の関係者からの現場報告が行われました。その後、3つのグループに分かれてのワークショップを行いました。1.現場報告
神奈川大学の鈴木英夫氏から、教育課程についての説明をいただきました。中央教育審議会の答申をもとに文部科学省が作成し、各学校がアレンジを行って学校教育を行っているとのことです。学校生活は、大きく分けて4つの要素(教科学習、道徳、総合的な学習の時間、特別活動:生徒会や学校行事など)と、部活動などの課外活動が加わって行われています。昨今のコロナ情勢により、オンラインでの教育課程が導入されていますが、できないものも出てきているという現状報告がありました。
京都産業大学の浦中千佳央氏からは、コロナ禍の中での大学の講義形態についてお話ししていただきました。キャンパスが閉鎖となり、オンライン講義へとシフトする中、学生は受講する環境の準備、教員は通常と異なる講義実施のための資料作成等の準備に追われたとのことです。ライブ配信による講義、映像を保存しておき学生自身のタイミングで受講するオンデマンド型など、試行錯誤しながらの講義となったとのことです。
三島市立北上小学校校長 露木知浩氏 三島市立北上小学校校長の露木知浩氏からは、休校要請が入ってからの大慌ての準備やその後の対応についてお話ししていただきました。3月2日(月)から春休みまで休校するように要請が入ったのは2月27日(木)の夕方で、翌日の金曜日しか児童に会うことが出来ない状態で準備をしなければならなくなり、さらに6年生に至っては、それで卒業となってしまうことになり、担任の先生は泣いていらっしゃったとのことでした。夏休みを12日に減らして、足りなくなった授業時間を確保したり、行事をやって心を育てる方針から修学旅行を計画したり、現場では非常に難しい対応を続けられたとのことでした。
浦安市役所危機管理監の河井繁樹氏からは、緊急事態宣言中および宣言解除後の浦安市の対応について説明していただきました。国や県の対策を補完する取り組みを進めてきたとのことでした。社会教育等については、市民大学や各種講座はすべて中止となりました。一部ではオンライン講座とし、動画の配信などが行われ、その一例として、Youtube配信中の「備える!浦安TV」を視聴しました。
浦安市役所危機管理監 河井繁樹氏 2.教育関係ワークショップ
三島市立北上小学校校長 露木知浩氏 現場報告を受けて、ZOOMのブレイクアウトセッション機能を使用し、参加者を3つのグループに分け、それぞれで議論をしていただきました。その後、全体会議に戻り、それぞれのセッションにおける論点を発表していただきました。
第1セッションは、大阪教育大学の後藤健介先生を中心に議論が行われ、若手の育成をどのように行っていくか、またマスクと手指消毒の重要性を伝えることが重要ではないかとのお話しがなされたとのことでした。第2セッションは、立正大学の原田豊先生を中心に、オンライン講義をやらざるを得ない状況になり、ICTにおける大きな進展が見られたこと、また、大教室では発言できなかった学生がオンラインによって発言してくれるようになったなどの、プラス面について議論されたとのことでした。
第3セッションでは、秋田看護大学の山田典子先生を中心に、現場の声を聞くことの重要性、オンライン講義での学生に関心を持ってもらうことの工夫、新型コロナに対して正しく恐れることの重要性について議論がなされたとのことでした。
新型コロナウイルスの蔓延により、教育現場は大混乱となり、その対応で大変なご苦労をされている様子を会員間で共有できた研修会でした。今後も、コロナ対策で試行錯誤が続くことが考えられます。日本市民安全学会では、様々な角度から教育現場の問題を考えていきたいと思います。
- 日本市民安全学会/西日本研修会
2020年7月18日(土)
[主催]日本市民安全学会
災害派遣等の自衛隊の活動について
自衛隊大阪地方協力本部長 陸将補 富崎隆志氏近年の自然災害現場での自衛隊の活躍は、国民から高い評価と信頼を得ています。自衛隊の災害派遣等について、自衛隊大阪地方協力本部長、富崎隆志陸将補からご講演を頂くことができました。
災害派遣の出動は、都道府県知事等から、その地域を担任する陸上自衛隊の駐屯地司令等への災害派遣要請に基づいて行われます。そのため、日頃からの首長との連携が重要となっているようです。また、自衛隊の活動は、産業廃棄物除去や、トンコレラの対応、南海トラフ地震や首都直下地震などへの迅速な対応等々、誠に多岐に渡っています。全国部隊を集中しなければ、こうした大規模自然災害に対応することはできません。派遣計画を策定し、訓練を実施していることなど、自衛隊が取り組んでいる現状についてスライドや動画などにより、わかりやすく説明して頂きました。災害現場での活動、現場隊員の被災者に寄り添った姿勢等が国民の高い評価につながっていると思いました。一方、地方協力本部は自衛官の募集業務を行っていますが、少子化や高学歴化などにより、募集環境は厳しく、初任給等の引き上げ、採用年齢の引き上げなどにより人材確保に努めているとのことでした。自衛官には多様な職域があり、その人の個性や能力に応じて活躍の場があるので、身近な人に関心のある人がいたら、近くの地方協力本部まで連絡頂きたいと締めくくられました。
看護の基本とソ-シャルディスタンス
「災害・テロ・戦争の後にニーズの高まる看護」
日本赤十字秋田看護大学 看護学部教授 山田典子氏看護の基本は、”慈しみの心を持って見守ること”であり、また患者さんとのコミュニケーションを取る上で、話しやすい環境を作るために、さまざまな配慮をしているとのことです。今回は、コロナ禍における患者さんやご家族との心の通わせ方、さらに、外傷を伴う患者に対応する場合などの、法医学の観点からの看護のあり方についてご講演いただきました。コロナ禍において、スタンダードプリコーション(標準予防策)は重要なことではありますが、患者さんに不安を与えるようなことのないように、マスクやゴーグルや防護服といった装備品の意味についてしっかりと説明することも大切です。また、不安を持つ患者さんとのコミュニケーションを取る際に、「患者さん」ではなく名前で呼びかけたり、孤独感を和らげるために適度なタッチ(身体に触れる)を活用したり、話をする場合には、ゆっくりと聞いてあげるなどの工夫をするとのことです。
フォレンジック看護は、法医学の専門的知識を看護学に応用したもので、暴力や虐待を受けた患者に対応するため発展してきました。最近では法医学の観点が必要な患者さんも増えてきており、フォレンジック看護はすべての看護師に学んでほしい領域とのことです。また、災害などの後にも、フォレンジック看護師は重要であり、患者の身体に残る証拠を保存しつつ、いち早くケアに引き継ぐことが求められるとのことです。
最後に、昨今の新型コロナ情勢がもたらした健康課題として依存症についてお話ししていただきました。感染症の抑え込みはできたものの、社会経済活動と家族関係の課題として依存症の増加が予測されるとのことです。不安や不眠やうつなどとアルコール依存は関連があり、身体不調を軽視することなく、早期対応および介入は大切なようです。 - 第2期スタート記念オンライン講演会
2020年6月13日
[主催]日本市民安全学会
20年後も安全な地域生活を可能にするスマートセーフコミュニティ
東京工業大学教授 西田佳史氏近年、様々な社会問題が顕在化する中で、これからの地域社会の方向性についてお話ししていただきました。少子高齢化が進み、単身世帯の割合も増えています。また、高齢者による消費者相談件数も増加しており、特に架空請求詐欺に関する相談は多いようです。さらに、製品事故によって高齢者の事故が増えています。脚立から落ちて怪我をしたり、石油ストーブに灯油ではなくガソリンを入れて事故に遭ったりすることも散見されます。一方、支える側の行政のパワーも脆弱化しており、特に消費者行政の職員の減少が顕著になっています。
このように、消費者が孤立し、消費者行政が弱体化する中で、いかに有効な情報を届けたい人(高齢者など)に届けていくかが大切となってきます。その中で、スマートセーフコミュニティというアプローチの方法が有効と考えられます。ハード中心のスマートシティが進展する一方で、ソフト中心のセーフコミュニティも一部ですが盛んに行われています。これらはエビデンスに基づいた検証を行うという意味で、非常に相性がいいのではないかと考えています。例として、母子手帳の電子化などを行っている、会津若松市の“会津若松プラス”を解説していただきました。
さらに、消費者に情報を届けることの大切さの例として、折りたたみベビーカーの指はさみ事故を起こさない機構の開発や対策済み製品への交換の推奨、消費生活センターのPIO-NETデータを用いた消費者事故の分析なども説明していただきました。スマートシティとセーフコミュニティの融合によって、行政と消費者をつなぐ有効な手段となりえると考えられます。
本講演でも出てきましたが、ノーベル平和賞を受賞したガルトゥングによれば、病気の不在を健康というが、病気そのものを扱う能力を持つことが健康へのアプローチであるとしています。私達も、「安全=危険の不在」ではなく、危険を扱う能力を持つことこそ、日本市民安全学会の方向性と言えるのではないでしょうか。
- オンライン模擬総会
[主催]日本市民安全学会
2020年5月23日
新型コロナウイルスの感染防止のため、日本市民安全学会2019年度総会が開催できず、今回はオンラインによる模擬総会が行われました。正式な総会は11月に予定されていますが、それまでの間の学会運営のため、決定しなければならない事項について協議がなされました。冒頭、石附弘会長から、「第2期スタートと今後の方向性」と題して説明がありました。日本市民安全学会ならではの特長を生かし、インターネット時代を見据えた学会運営に再構築するため、会則改正や人事刷新について説明していただきました。主な変更点は、総務局の新設、副会長を細分化して8名とすることなどが示されました。その後、総会記念行事「コロナ情勢と市民安全を考える」が開催されました。
1. 基調講演:コロナ情勢に思う(京都産業大学名誉教授 藤岡一郎氏
日本市民安全学会の第2期のスタートに当たり、これまでの”市民安全”から、”世界市民”もしくは”宇宙市民”としてのグローバルな視点を持つことが大切ではないかと思われます。過去にペストが流行した時代がありましたが、今回のコロナ禍では人間そのもののあり方、資本主義のあり方を考える時といえます。第2期のスタートとして、まずはベースラインをどのように設定するかを再認識する必要があるのではないでしょうか。モノからコトへの変革をすすめる上でも、学会員のみなさんと、安全、安心、安楽を考えていければと思います。
2. ワークショップ:コロナ情勢と市民安全
2-1. 公衆衛生危機としてのコロナ情勢(東海大学医学部公衆衛生学客員教授 渡辺良久氏)
コロナウイルスは近くの人との接触および飛沫により多くの場合は感染すると言われています。しかし、米CDCの発表によると、同じ室内ではあるものの離れていても感染した事例というのが示されています。エアコンの気流に乗ってウイルスが飛散してしまうことがあります。空気感染とまでは行かないまでも、飛沫が拡散することで広い空間でも感染する可能性が示されています。コロナウイルスは中国から世界に拡大していますが、現状では型が変異した欧州型や米国型が広まっています。さらに、南米型が拡大する可能性があります。コロナ禍での行動変容として、給付金等による介入による外発的動機づけで収束させようとしてきましたが、これからは自ら進んで生活様式を変え、習慣的な対応を行うことが重要と思われます。
2-2. コロナ情勢と教育~こどもの安全~(大阪教育大学教授 藤田大輔氏)
コロナ禍における学校での対応についてお話ししていただきました。緊急事態下における家庭学習において、大学ではオンライン授業を行っているところが多いものの、小学校や中学校、高校では、教科書や紙の教材を用いたり、テレビ放送の教材を用いたりするなどの手法がほとんどのようです。大学のような双方向のオンライン授業を行っているところは少ないとのことです。また、子どもたちのコンピュータの活用について、OECDが調査したものによると、コンピュータを使って宿題をすることは、OECDの平均22%に比べ、日本はわずか3%となっており、家庭学習での活用では世界水準から遅れを取っています。今後、社会が変化する中で、また緊急事態等が発生した場合でも対応可能な、新しい学び方を考えていくことが求められています。
2-3. コロナ情勢と地域コミュニティ活動(大阪府防犯協会連合会長 池崎守氏)
コロナ禍における地域活動についてお話ししていただきました。大きな行事については1年間中止することを決定したそうです。しかしながら、万が一の避難所開設の方法や、さまざまな情報の共有方法について若い世代を中心に検討を勧めているそうです。緊急事態下において、子どもたちの行動についての苦情も出ていますが、学校と地域、人と人が話し合いを持って問題を解決しており、双方の連携が大切と考えています。
2-4. コロナ情勢と自治会活動(北須磨団地自治会長 西内勝太郎氏)
北須磨団地の自治会館は閉館して、感染拡大防止に努めています。一方で、自治会や婦人会の会合やパトロールは継続しており、新聞発行を行い住民に向けた広報活動は行っています。三密を避けつつ、朝の散歩などではマスクをせずに深呼吸することの大切さも伝えています。また、日常の生活における、うがいや手洗いの励行についても、新しい生活様式を行いつつ継続するよう住民に伝えています。現在、夏のふるさと祭りを開催するか否かを検討しているところです。
会則改正や新しい人事が示され、学会の第2期スタートが良い形でできました。また、コロナ情勢を乗り切るための知恵が各界から集結し、日本市民安全学会らしいオンライン模擬総会となりました。
- 日本市民安全学会初のオンライン研修会
[主催]日本市民安全学会/Web西日本研修会
2020年5月16日
日本市民安全学会初のオンライン研修会
新型コロナウイルスの感染防止のため、緊急事態宣言が全国に発せられて一ヶ月が経過し、学会の活動も自粛が続いています。
今回は、オンラインという特性を活かし、西日本地区の会員等にご参加いただき、最新のコロナ情勢を学ぶ機会となりました。(参加者27名)感染症対策~新型コロナウイルスの本当の姿
東海大学医学部 基盤診療学系 衛生学・公衆衛生学客員准教授 渡辺良久氏【要旨】中国に端を発した新型コロナウイルスは、欧米で急拡大し、大勢の感染者および死者を出しています。日本国内では、3月中旬に第一波として「武漢型」がピークとなりました。その後、「ヨーロッパ型」が流行し、日本でも緊急事態宣言が発せられましたが、1週間くらい発するのが遅かったと言えます。全国に発せられたのは、すでにピークに到達してしまっていました。
武漢型は、子供や若い人は罹りにくいとされていましたが、ヨーロッパ型は子供も重症化する状況となっています。今後は、対応が遅れている南米地域で猛威を奮っている「南米型」が来る可能性があります。また、現在開発が進められているワクチンは、ヨーロッパ型をベースに開発されているため、南米型には効果が薄い可能性もあります。
新型コロナウイルスの流行タイプは、今年のみで収束するのか、2~3年で徐々に収束するのか、インフルエンザのように毎年来てタイプが毎年変化するのか、いまだわかっていません。
また、これまで国内では、男性感染者が多数を占めていましたが、4月後半から女性感染者が増えてきています。病院の看護師や介護施設の職員・入所者に広まっているのではないかと考えられます。 - 感染症対策について
[主催]日本市民安全学会
2020年2月15日
有楽町国際ビル8F・日本倶楽部感染症対策について
東海大学 医学部 基盤診療学系 衛生学・公衆衛生学 客員准教授 渡辺良久氏コロナウイルスが社会問題となっている状況において、「感染症対策」という正にホットなテーマでご講演頂きました。
日本が島国のため古来から感染症は海外から持ち込まれた話、感染症の分類、発見地域名を使うことが自粛されつつあるお話、隔離政策や差別などの教訓から現行法が国際法と呼応しながら整備されてきた歴史、SARS・MERS・コロナウイルスの特徴、最新の新型肺炎(COVID-19)の患者数増大状況に対する統計分析、ワクチンのお話、10日間で建設された中国の野戦病院型「火神山医院」「雷神山医院」、マスクの本当の意味、うがいの効能のタブー、自らの免疫力を高めること等を、先生の国際的なご活躍の歴史ご経験を踏まえて非常にわかりやすくお話しいただきました。
また、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」についての解説も、時宜にかなった有益なお話でした。新型肺炎コロナウイルス問題の先行きに関し、不安感の増大に対して、参加者全員が感染症に対する正しい知識を得られた素晴らしい研修会でした。
- 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2019年12月7日
[主催]日本市民安全学会
[内容]
“食べる・動く・生きる支援”で
よりよい生活とより豊かな人生を!
~「浦安モデル」として
新しい病院の価値を共に創って発信!~タムス浦安病院リハビリテーション部長 竹内正人氏
社会が高齢化する中、入院患者は増えています。世の中に急性期の対応を行う病院は多々ありますが、今回お話ししていただいたタムス浦安病院は、急性期後の回復期をターゲットに、リハとケアを中心にした運営をされています。回復期のリハとケアの重要性についてお話ししていただきました。
タムス浦安病院は、入院される患者の状況に応じて3つの病棟があります。
一つ目は回復期リハビリテーション病棟で、急性期後の社会への復帰を目指す集中的なリハビリが必要な患者向けのものです。タムス浦安病院リハビリテーション部長 竹内正人氏 一つ目は回復期リハビリテーション病棟で、急性期後の社会への復帰を目指す集中的なリハビリが必要な患者向けのものです。
二つ目は地域包括ケア病棟で、症状が安定していて在宅や介護施設での生活に向けた患者向けのもの、
三つ目は緩和ケア病棟で、末期のガンなどを含めた身体的・心理的な緩和治療が必要な患者向けのものです。
また、千葉大学病院との連携によって、ロボットリハや高次機能障害のリハといった高度なリハビリを取り入れ、回復を早くする試みも行われています。さらに、身体維持の観点から、「水(1日900cc以上の水分摂取)・食事・排泄・運動」の4点セットをとても大切にしており、特に年を取るほど肉(タンパク質)を摂取することは重要であると説明されていました。
続いて、患者の事例紹介をしていただきました。食べることの支援や体を動かす支援、生きがいを与える支援などを行ったことによって、体調が回復していった89歳の女性の例や、薬の量を減らしたり過干渉をやめ、自ら行動するように変えたりすることによって元気になった70歳の女性の例などを解説していただきました。
今回のお話しをお伺いして、回復期ケアから緩和ケアまでを専門に行う病院は、今後ますます大切な存在となると確信しました。また、竹内先生の「ボケ防止には3つ以上の趣味を持ちなさい」との言葉が胸に響きました。
- 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2019年6月29日
[主催]日本市民安全学会
[テーマ]
平成時代の安全安心を振り返って~ 第2回クロストーキング~昨年末に行われた第1回に引き続き、全員参加のクロストーキング形式で、学会会員の皆様に自由に語っていただきました。前回に引き続き、堀内裕子氏の司会により進められました。
法学系の博士学位の取得方法について
(日本大学法学部助教 西山智之氏)法学系の大学院における博士号の取得について、博士論文を書く手順や審査方法等を、実体験に基づきお話ししていただきました。現在は博士号の取得方法として、大学院の博士後期課程(博士課程)を修了し取得する「課程博士」と、課程への在籍を問わず論文を大学に直接提出し取得する「論文博士」の2つの方法があるとのことでした。今後は博士号の取得方法としては大学院の博士後期課程を経た「課程博士」が主流となっていくのではないかというお話でした。
日本大学法学部助教 西山智之氏 シニアライフデザイン 堀内裕子氏 シンガポールはなぜ安全なのか
(シニアライフデザイン 堀内裕子氏)観光客の目線では感じ取ることができない、真のシンガポールについてお話ししていただきました。非常に安全な国ということで、夜でも子どもが歩けたり、飲食店でテーブルにケータイを置いて場所取りをしても大丈夫だったりと、治安はいいようです。それもそのはず、至る所に大量のカメラが取り付けられており、すべての行動が把握されているようです。さらに、SGセキュアという仕組みで、市民の目で防犯が成り立っており、アプリを使って市民が通報できる仕組みもあるそうです。ただし、凶悪な強盗や強姦は少なくないとのことです。また、街中に高級車の自動販売機があるそうで、その場でクルマが買えるという驚きの街とのことでした。
教師を育てる仕事 (神奈川大学特任教授 鈴木英夫氏)
中学・高校の社会科教師や校長を務め、現在は大学で教師志望の大学生を指導されています。今回は、学校における教育の在り方、社会科教育法についてお話ししていただきました。子供が好きというだけで先生になろうとする考え方は、ある意味で危険であり、子どもたちが成長する姿を見るのが好きというスタンスが大切であるとのことでした。また、定時制高校などにも従事された経験から、生徒たちの気持ちに寄り添った授業の進め方を考えるようになったとのことです。頭ごなしに叱りつける方法ではなく、子どもたちの良い気づきに出会ったときは、素直にほめることも大事であるとのことでした。
神奈川大学特任教授 鈴木英夫氏 アイデア・ギルド代表取締役 鈴木肇氏 街の中でのピクトグラム
(アイデア・ギルド代表取締役 鈴木肇氏)安全・安心のためのマークとして、さまざまな所でのピクトグラムやキャラクターのデザインついてお話ししていただきました。文字は世界に様々ありますが、ピクトグラムやキャラクターは、世界共通で大体が視覚伝達され、認識されやすくなっています。神奈川県県内を中心に、駐車場や球場、商店街などで目に留まりやすいデザインとして作成されています。文字のフォントについても気を配られていて、明朝体よりゴシック体の方が遠くから見たときに認識しやすいそうです。その意味からも交通標識に使用されているとのことです。
ピクトグラムやキャラクター ネットショッピングについて
~ネットショッピングを楽しく利用するために~
(消費生活コンサルタント 木村嘉子氏)公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の一員として、消費生活コンサルタントとして活動されているとのことです。最近の活動のひとつの中から、安全・安心にネットショッピングをするためのポイントをわかりやすく解説していただきました。購入しようとするサイトの安全性、連絡先や返品についての記述があるかどうか、通信販売にはクーリングオフ制度がないために、返品についての記述が重要とのことです。近年では、ネットで買い物をすることが普通に行われるようになっており、安全性についてのチェックがおろそかになりがちです。頭の中で“ちょっと待って”と確認する姿勢が大切とのことでした。
消費生活コンサルタント 木村嘉子氏 日本公衆電話会 田島敏明氏 日本公衆電話会の活動と「こども手帳」作成秘話
(日本公衆電話会 田島敏明氏)地域の安全・安心に貢献するために活動する中で、子どもたちの安全・安心の意識付けのための小冊子の作成および配布を行っているとのことで、今回は「こども手帳」や「ネット安全ガイドブック」についてお話ししていただきました。前者は小学生向けとして、後者は中学生向けとして作成されており、生活するうえで自分の身を守る方法について具体的な事例を交えながらまとめられているとのことです。また、ケータイやスマホしか知らない子どもたちに、いざという時のための公衆電話の使い方を教える勉強会などを開催しており、その活動についてもお話ししていただきました。
社会的な免疫をつくれないか?
(東京工業大学教授 西田佳史氏)子どもにまつわる事故は枚挙にいとまがありません。これまで行われてきた調査研究についてお話ししていただきました。ベビーチェアを普通に使っていたのに死亡事故になった事例や、野外保育中に墓石が倒れ死亡に至った事例など、現場の人が頑張るだけでは事故は予防できません。一方で、日々、新たに生み出される対象に対するリスクに関して、非常にうまく対応している仕組みとして、体内の多種多様な白血球を中心としたエコシステムである「免疫系」があります。人工知能やIoT技術を活用することで、ある種の免疫系を社会的な仕組みとして作り出し、日々、新たに生み出されるリスクを扱うことが可能な時代が来ているとのことでした。
東京工業大学教授 西田佳史氏 日本防犯設備協会特別講師 富田俊彦氏 皇居勤労奉仕 (日本防犯設備協会特別講師 富田俊彦氏)
皇居内の清掃奉仕活動についてお話ししていただきました。あさま山荘事件の隊長の奥様が活動されていたことがきっかけで、この活動に参加されているとのことでした。「伊勢敬神団」の一員として、連続4日間の奉仕活動を行い、普段目にすることのできないパワースポットを清掃できる喜びを感じたそうです。最後に、昭和天皇陛下御製の歌を披露していただきました。
「戦いに 敗れしあとの 今もなお 民のより来て ここに草とる」
勤労奉仕団に対して、昭和天皇が感謝のお気持ちを詠まれたものとのことです。
今回は、8名の会員に自由にお話していただきましたが、自然と安全安心に関することに話題が移っていくところが、日本市民安全学会らしいクロストーキングでした。短い時間で話題をまとめていただきましたが、もっと詳しいところまで聞いてみたい内容ばかりでした。
- 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2019年4月6日
[主催]日本市民安全学会
1 警視庁技能指導官の技とこころ:被疑者車両割り出しの術
警視庁鑑識課 田村彰氏(警視庁技能指導官)いまや、犯罪に関わった車両の割り出しには、街中の防犯カメラに残された車両の映像が欠かせません。しかし、鮮明な画像が得られることは、ほとんどありえません。鑑識官の観察力によって、画像から得られたほんのわずかな車の特徴をつかみ、その車を運転もしくは同乗していた被疑者と考えられる人物の特定で検挙につなげているとのことです。ナンバーが映っていたとしても、偽造ナンバーであることが多く、全く違う人物を誤認逮捕してしまうことにもなりかねません。車両の特徴を積み上げて、外堀を埋める地道な手法が有効とのことでした。
警視庁鑑識課 田村彰氏 2 明日の社会(Society5.0)にかける夢
~ドローン・電気自動車・自動運転車・空飛ぶクルマ~
澤田雅之技術士事務所所長 澤田雅之氏
(元警察情報通信研究センター所長)最新のドローン技術と、最新の自動運転自動車の技術を組み合わせることで、将来的には空飛ぶクルマが実現するという夢のあるお話しをしていただきました。ラジコンヘリはコントロールが非常に難しいが、ドローンはあらゆるセンサーにより、空中の一点に留まるようにプログラミングされているので、操縦は難しくないとのことです。また、自動運転車は、現状では部分的に自動運転をするレベル2という段階ですが、将来的には完全な自動運転となるとのことです。
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田村氏の画像から車を見つける観察力という技術は、いわばディープラーニングの究極といった感じで、車の特徴データベースの積み上げと、わずかな映像から情報を読み取るものと言えそうです。また、澤田氏の自動運転車のお話では、車のフェイルを人がセーフするというレベル3は合理的ではないとのことで、非常に危うい段階であると感じました。こちらも画像情報等の積み上げによる、ディープラーニングと言えそうです。澤田雅之技術士事務所所長 澤田雅之氏
田村氏の画像から車を見つける観察力という技術は、いわばディープラーニングの究極といった感じで、車の特徴データベースの積み上げと、わずかな映像から情報を読み取るものと言えそうです。また、澤田氏の自動運転車のお話では、車のフェイルを人がセーフするというレベル3は合理的ではないとのことで、非常に危うい段階であると感じました。こちらも画像情報等の積み上げによる、ディープラーニングと言えそうです。
- 日本市民安全学会/朝霞駐屯地陸上自衛隊総司令部、陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」での研修
2019年3月16日
[主催]日本市民安全学会
[共催]警察政策学会、NPO浦安防犯ネット、ベイエリア連携の会
[協力]陸上自衛隊陸上総隊司令部[内容]
私たち市民生活の安全安心に大きくかかわる日本の防衛について、陸上自衛隊朝霞駐屯地にお伺いし最新の状況を学びました。一般に開放されている「りっくんランド」とは別に、普段は入ることができない、陸上総隊司令部にて防衛講話をしていただきました。防衛講話「陸上自衛隊の概要と改革、陸上総隊の概要と災害対処」
陸上総隊司令部 一等陸佐 大塚慎太郎氏まず、陸上自衛隊の概要についてお話ししていただきました。
組織定数としては15万9000人で、駐屯地の数は160以上にもおよびます。時代とともに、社会および世界の情勢変化に応じて、主たる脅威は変わってきているとのことです。
さらに、2018年3月新設の陸上総隊は、全国の陸上自衛隊を統合運用するべく組織され、全国の師団・旅団も即応型に改編し、さらに島しょ部への対応力を確保するために、水陸機動団などが新たに創設されたとのことです。
最後に、災害派遣と首都直下地震への対応のお話もしていただきました。災害派遣では、さまざまな災害対応がある中で、離島からの患者搬送は毎日のようにあるとのことです。また、口蹄疫や鳥インフルエンザなどの対応も任務となっており、今年広範囲に発生した豚コレラにも対応しているとのことです。
首都直下地震の対応では全国から自衛官が集まるとのことですが、そんな中でも一部の部隊は国防任務をおろそかにすることがないように体制を整えているとのことでした。陸上総隊司令部 一等陸佐 大塚慎太郎氏 振武臺記念館の見学
振武臺記念館 敷地内にある振武臺記念館は、旧陸軍士官学校の建物を移設したもので、戦前の士官学校での教育内容など各種資料、文物が展示されており、同館説明隊員の力のこもった説明(朝霞の地名の歴史、士官学校の創設や見学精神、服装、教育内容、卒業者一覧、振武臺の扁額(敗戦時、扁額を米軍から守るため地下に埋蔵)、米軍施設として使われた頃の状況など、昔の日本人の姿を学ぶ感銘の深い説明でした。
りっくんランド館見学
最後に、りっくんランド館を見学し、陸上自衛隊の装備の実物の展示、ヘリコプターのシュミレーター飛行体験など朝霞駐屯地での現場研修を終えました。
- 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2019年1月19日
[主催]日本市民安全学会
[テーマ]
リアリズム国防論
元陸上自衛隊陸将補 河井繁樹氏昨年、彩図社から出版された「リアリズム国防論」の著者が、安全保障、災害派遣、日米同盟、国際平和協力活動等の国防の最前線に立ってきた経験に基づき、それぞれについて具体的に解説をされました。
①東西冷戦時代における北海道の最前線勤務の話では、ソ連にとっての北海道の戦略的価値や、ソ連の北海道侵攻を阻止するための自衛隊の戦い方や現場の隊員が緊張感をもって訓練に取り組んでいたこと
②中国の急激な軍事力の増強や太平洋進出のための活動の活発化等の安全保障環境の変化による自衛隊の組織改編や戦い方の変化
③我が国防衛上の日米同盟の重要性や米軍との信頼関係の構築の現場
④冷戦終結後の国際貢献のための自衛隊の国際平和協力活動では、実際に確認した中南米のハイチPKOやアフリカの最も新しい国である南スーダンPKOなどの現地の状況に触れ、国連にも評価されている派遣国住民の目線に立った日本らしい活動の実施現場
⑤さらには災害派遣に対する現場隊員の意識や被災者目線での活動
などについて、具体的な話を交えながら分りやすく説明がなされました。元陸上自衛隊陸将補 河井繁樹氏 また陸上自衛隊で最も過酷な訓練と言われているレンジャー訓練での苦労話では、水と食料が制限される状況下で、道なき道を行進しながら降ってきた雨水をためて水分を取っていた経験や、すべての任務が終了して駐屯地の全隊員や家族などに迎えられる感動の帰還式の様子なども紹介されました。
会員の皆さんにとっては、日頃目にすることのない防衛の最前線での話を聞くことができて、防衛省・自衛隊や安全保障に関して関心が高まったのではないでしょうか。
- 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2018年12月8日
[主催]日本市民安全学会
[テーマ]
平成時代の安全安心を振り返って〜私の安全安心、新時代の一手〜今回は全員参加のクロストーキング形式で、平成時代を語り合うこととなりました。サロン形式で開催され、堀内裕子氏の軽妙な進行により様々な方々に話題提供していただきました。
◆平成元号発表物語 (日本市民安全学会会長 石附弘氏)
1998年1月8日にスタートした新しい時代の幕開けは額縁に入った「平成」の文字を小渕官房長官が掲げるシーンからでした。その仕掛人である石附会長に語っていただきました。新元号発表の直前に揮毫されたため生乾き状態だったこと、照明が反射して見えづらくならないように額縁のガラスは外したことなどに加え、箱に入れたまま官房長官に渡したことの意味などの裏話をしていただきました。
◆厚木市セーフコミュニティ10年を振り返って
(日本市民安全学会会長 石附弘氏)
(厚木市 倉持隆雄氏の代理として)
犯罪がはびこり、駅前の自転車放置が多く、体感治安が悪かった厚木市を大きく変えた施策の一つがセーフコミュニティではないでしょうか。その始まりからこれまでのことについて語っていただきました。一時期は刑法犯認知件数が神奈川県内のワースト1位でしたが、セーフコミュニティの取り組みを通じて安心して住める厚木市を作り上げてきたとのことでした。◆市民とともに共創する科学
(科学警察研究所犯罪予防研究室 原田豊氏)
GPS衛星からの電波を安全のために使うことを研究し、実証実験を経て実用化にまでこぎつけた「聞き書きマップ」について語っていただきました。子どもたちの安全安心マップ作りは、紙と鉛筆を持って行っていましたが、GPS受信機とICレコーダーとカメラの3点セットになり、最近ではスマホ1台でできるようになったとのことです。今後は、高齢者の認知症予防ツールとしての展開を検討中とのことでした。◆警友会に思う
(高島平警友会 山下弘忠氏)38年間の警察官生活ののち、第二の人生として警友会に入り、現在様々な活動をされているとのことです。その警友会について語っていただきました。警友会とは、警察を退官した後、現役警察官をバックアップしたり、退官した人たちの親睦を深めたりする会ですが、任意での加入とのことです。警察全体では26万人中10万2000人が、警視庁では4万人中9500人が加入しているとのことです。退官した後にまで、縦割りの組織に入りたくないという人もいるそうです。
◆日本の警察における人身安全の観点から
(早稲田大学社会安全政策研究所 矢作由美子氏)ストーカーやDVなどの身体に危険がおよぶような事案に関して、警察がどのように介入し対応しているのかをお話ししていただきました。RISTEXのプロジェクトとして行われた「親密圏内事案への警察の介入過程の見える化による他機関連携の推進」の研究内容を含め、また桶川ストーカー殺人事件などの具体例なども交えながら説明していただきました。生活安全部と刑事部との連携などについても解説していただきました。
◆特殊詐欺被害防止に関する調査を行って
(セコムIS研究所 濱田宏彰氏)オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺被害の現状と被害者の心理状態などについて、先に行った調査結果からお話ししていただきました。警視庁の委託業務として行った調査分析の内容を中心に、被害者と回避者の違いがどこにあるのか、さらに、そのジュニア層の意識がどのように関連しているのかなどについて説明していただきました。被害を回避できた人は、手口を詳しく知っている傾向があるとのことでした。
◆医療現場で最近思うこと
(葛西昌医会病院医療連携室 村瀬恵子氏)社会が変化する中、これからの医療がどう変わっていくのか、私たち市民はどう対応したらいいのかを、具体例を挙げながら詳しくお話ししていただきました。患者と医療の需給バランスが崩れ、病院に入れない人も出てくる可能性があるとのことで、今後は地域包括ケアセンターの存在がより重要になってくるとのことです。また、社会問題になりつつある医療ツーリズムによる未払いについても解説していただきました。
◆元気な中小企業主の話
(東京都中小企業振興公社 久保田徹雄氏)中小企業には元気な会社がたくさんあるものの、市場を開拓する術を見つけられず、自社のオリジナル商品を社会にアピールすることができずにいるケースが多いとのことです。全国にある中小企業は380万社あり、うち都内には45万社あるそうです。これらの会社の支援し、新しいマーケットの開拓やマッチングなど事例をお話ししていただきました。社員の健康に対するサポート事業や、歩行困難者の避難ツールの開発事業、書籍のダイジェストを配信する事業などについて説明していただきました。
◆地域の見守りとキノコおじさん
(日本防犯設備協会 富田俊彦氏)日本防犯設備協会で特別講師をする傍ら、地域に戻るとその知識を生かし、子どもたちの安全・安心に注力されてきたとのことです。その活動の一旦を語っていただきました。子どもたちを誘導する旗の柄にキノコのイラストを付け、時に子どもたちに見せながら、見守りを続けているうちに「キノコおじさん」と呼ばれるようになり、親しまれているとのことでした。また、手品を交えた交通安全教室を行うなど、子どもたちに楽しみながら学んでもらう仕掛けを日々考えているとのことでした。
堀内裕子氏 一人10分という制限時間を守っていただいた方はほとんどいらっしゃらず、平成という時代を駆け抜けてきた勇者のみなさんの熱い話をたくさん聞くことができた勉強会でした。
今回は、参加者の半分の方にしかお話を聞くことができませんでしたが、次回、第2弾クロストーキングが楽しみです。 - 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2018年11月17日
[主催]日本市民安全学会
[内容]医療現場の危機管理
危機管理コンサルタント 鍋島 修氏
医療現場では医師や看護師などの慢性的な不足に悩まされ、加えて高齢化社会に伴う受診者の増加により多忙を極めています。そんな中で医療行為に伴う事故の発生が増えているとのことです。今回は、医療事故をはじめ、医療の現場で起きる様々な問題を危機管理の面から詳しく解説していただきました。人の命に係わる医療現場という特殊な事情もあって、通常の企業危機管理の考え方ではカバーできない問題が起こってくるとのことでした。薬物投与、メスや針を用いた医療行為などはその典型です。また、カルテや診療情報など、個人情報の取り扱いやその漏洩時の対応などにも注意を払わなければならないとのことでした。さらに、最近では、救命措置を拒否する問題や、LGBTの問題、来日外国人の医療費未払い問題などが新たに出てきたとのことでした。
何か問題が起こった時に、すべてを弁護士に頼ってしまう医療機関も少なくなく、管理者の危機管理に対する意識が乏しいため、報道対策を含め、実務を担う人材が育たないという問題もあるとのことでした。* * * * * * * *
お話の中で、救急車を呼んだにもかかわらず、救命拒否をするケースが出てきているとのことで、患者や家族との意識のすれ違いがあったとしたら、大きな問題に発展する可能性があると感じました。普段、見えてこない医療現場での問題点が理解できた勉強会でした。 - 日本市民安全学会/有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
2018年10月20日
[主催]日本市民安全学会
[内容]眠れる獅子、起きる
アルプスシステム インテグレーション(株)菅野泰彦氏
アルプスシステム インテグレーション(株)菅野泰彦氏
世界第二位の経済大国となった中国。近年の情勢は目を離せない状況にあります。テレビ・新聞等で報道されない日はない状況ですが、本当の中国はどうなっているのか?
長く中国で駐在し、ビジネスにおいても、普段の生活においても経験豊富な菅野氏にたっぷり語っていただきました。日本は1億総中流といわれていますが、中国は14億人のうち中流以上は2億人強という状況で、我々が日常的に認識している中国人はこの2億人の層の中の極一部という、この多様性こそが中国の上昇エネルギーとなっているとのことです。また、日本に対して友好と反日を繰り返す政策によって、より上昇エネルギーを大きくさせている「政策エンジン」という表現も非常にわかりやすいものでした。市民の不満の矛先を日本にしておくことで、中国国内の安定を行っているという意味もあるそうです。また、人民元の貨幣価値の危うさの一方で、電子マネーの普及の早さはかなりのもので、街なかの屋台の支払いでも、お参りのお賽銭でも、QRコードを使った電子マネー決済が当たり前の世の中になっているとのことでした。日本からはなかなか見えづらい中国のいまがクリアになった勉強会でした。