会員寄稿コーナー
『大地と光』

  • 進化する盗犯手口の実態と市民安全

    〜便利さの裏に潜む犯罪〜

    寄稿No.13: 2019年2月


    日本市民安全学会 顧問
    元警察庁指定広域技能指導官
    公益社団法人日本防犯設備協会
    特別講師 富田 俊彦

    1 急速に進化する防犯機器

    物がインターネットにつながるIOTの時代が到来して、ビックデーターとAI(人工知能)が連動する新たな機器が次々と開発され、市民生活の分野でも使われています。
     スマートフォンや監視カメラなどがAIと融合することによって多様化・高機能化が急速に進み、防犯だけでは無く、防災や雑踏警備、社会インフラ、市民生活の中に便利な機器が提供されています。更に、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、新たなAI機器の開発が加速されています。

    2 便利さの裏に潜む怖さ

     「防犯の要」と言われるカギも進化しており、ノンタッチキー、カードキーをはじめ、指紋、静脈等のバイオメトリックスを利用した電気錠システムやスマートフォンを使って遠隔操作でドア錠を施解錠する錠などが急速に普及しています。
     一方では、合い鍵を複製した犯人が女性の部屋に不法侵入する事件、電子キーの制御設定を変更して不正解錠し人気車種の乗用車を多量に窃取する事件、電子キーの便利な仕組みを悪用した手口でドアを開け、エンジンを始動させて乗用車を窃取する巧妙な犯罪の発生が予想されるなど、その抑止対策が求められています。カメラの高機能化・高解像度化によって人の目では見えない遠方から気付かない場所から撮影された鮮明画像が犯罪者に使用されないかと心配です。使い易さ、格好良さを優先するあまり、安全性が疎かになって、映りすぎのリスクを抱え、今まで予想もしなかった新たな手口の犯罪を誘発し、流出した画像で誹謗中傷されるなど市民の生活に悪影響を及ぼす危険性があります。

    3 見えすぎる怖さ

     新聞報道によると、インターネットの情報を使用して、犯行対象の住宅を検索して下見をし、空き巣を繰り返していた4人組の窃盗グループが検挙されています。また、SNSを使用して人を募り、犯行のターゲットを選定し、下見に位置情報検索や投稿履歴を検索して自宅を特定し、家人の留守を把握した上で広域に空き巣の犯行を重ねていた20歳代の窃盗グループが検挙されています。ネットやSNSなどで、見ず知らずの他人から、常時、我が家が見られ行動を監視され
    ることに不安を感じます。

    4 見られている怖さ

     「顔認証システム」は、ここ数年で急速に普及し、スマホのロック解除、業務用パソコンにログインする際の本人確認、スーパー・書店・ドラックストアーでの万引き防止、空港ビルやスタジアムでの不審者の検索やテロ対策、会社やテーマパークの入退場ゲートのチェック、会員制飲食店の入店チェック、店舗でのキャッシュレス支払いなど様々な分野で使用されています。高精度の防犯カメラが各所に設置されて、日常生活で群衆の中の自分の顔が常時撮影され続け、知らない間に、解像度の高い映像で瞬時に個人識別され、事前登録した指名手配犯人などと照合されています。マスクやサングラスを掛けていても顔の一部からAIが推測して本人確認することが可能となり、顔認証システムの精度は99,2%に上っています。更にカメラは、「群衆の中で不自然な人の行動を読み取る動体検知、人の心理状態から身体の揺れの変化や体温で興奮状態を読み取る感情検知、人の歩き方から特徴をつかんで個人を特定する歩容認証」など夢の様なシステムが次々と開発されています。

    5 場所を特定される怖さ

     平成29年3月15日「全地球測位システム(GPS)端末を使用した捜査は違法である」と最高裁判決が出されています。平成30年3月22日、東京高裁では「令状をとらずにGPSシステムを使用して行われた捜査は違法である」と連続空き巣事件で無罪判決が出ました。一方では、一般人が同型の機器をネットで容易にリースして浮気調査や行動確認などで使われているのが現状です。

    6 画像を活用した新技術の取り組み

     画像の鮮明度と解析技術が急速に進み「防犯カメラ映像は警察の武器」と言われるほど事件・事故の捜査資料で有効に活用されています。更に、情報技術が進み設置されたカメラや車載カメラで収集した画像と地図情報や統計データーをAIで融合させ、不審者の行動を自動検出し、犯罪の発生を予測して、画像解析や顔認証システムによる指名手配容疑者の特定やドローンによる容疑者の追跡など新技術の研究と開発が進んでいます。

    7 問題点と対策

     歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、著書「人類の未来・ホモデウス」の中で、「便利になれば人は幸福になれるのだろうか? AIやテクノロジーは神にしか与えられなかったことを自分でしようとしている。AIには感情や主観は無く、人間とは全く違った存在である」と述べています。私達は、進化し続ける技術の恩恵を受け、便利さを共有していますが、その裏に潜むリスクや現状の問題点を正しく把握して、機器のシステムや性能・品質を十分理解すると共に、新たに開発された機器の使用目的を明確にして、許容範囲を検討するなど、一定の線引きや必要な法規制を行い、プライバシー保護や個人情報保護法を遵守し、倫理観を持って、市民生活を脅かすことなく安全に使用されなければなりません。
     尊敬する故田辺隆一*(田響隆仁)先生の「世は神仏が創造し、この世は人が創作する」という教えが重く心に響きます。
    *田辺隆一・・・田響隆仁のペンネームで『言の葉の幹を捜す』等の著作がある。

  • 救助部隊の連携と活動拠点について

    ~平成26年広島土砂災害の現場から~

    寄稿No.12: 2018年5月

    日本市民安全学会 理事
    元陸上自衛隊第13旅団副旅団長
    河井 繁樹

     平成26年8月20日未明、局地的な豪雨により発生した広島市北部の土砂災害により多くの犠牲者や住宅の倒壊等の甚大な被害を受けました。私は、この時に陸上自衛官として災害派遣に参加し、現場の活動を踏まえながら政府の現地対策本部や広島県及び広島市との連携に関わった経験から、救助活動の現場を見ての所見を述べます。

    1 救助部隊の現場連携の具体的意義について

     発災直後から人命救助や行方不明者の捜索等のために、自衛隊、警察、消防に加え国土交通省のTEC-FORCE(注)が現地において活動しましたが、この際、各部隊の連携により、それぞれの特性を活かし、相互に補完し合って、現場で生じた問題点に迅速に対応できたと思います。たとえば、暗渠(あんきょ)の中の捜索で、土砂を取り除くために泥水の中を潜らなければならなかった時に、国土交通省が装備している土砂を吸引できるバキュームが使えたことや、土石流で散乱しているプロパンや自動車からのガス漏れ燃料漏れなどは消防が一元的に対応し、捜索時にあわせて見つかった想い出の品などは警察が一元的に管理することとしました。また、救助活動の妨げとなっていた巨大な岩は、自衛隊の装備を使って砕き、搬出できるようにしました。更には救助活動間の二次被害防止のための避難に関しても連携を図りました。救助活動を行っている部隊・隊員にとって活動を中断して避難するのは気が引けるもので、まして指揮系統の違う4つの部隊は、いわゆる意地の張り合いになって避難が遅れることが危惧されました。このため降雨が強くなった場合は、TEC-FORCEに避難の判断をしていただき、4部隊が同時に避難しました。この際、近くにいる住民やボランティアにも避難を呼びかけることとしました。この他にも多くの問題点を連携で対処することができました。
    (注)TEC-FORCE…(緊急災害対策派遣隊:Technical Emergency Control Force)は、2008年に国土交通省に設置された。大規模災害等の際に現地に派遣され、二次災害防止や応急復旧の為に被災状況調査や応急対策及び技術的助言等を行う組織。

    2 救助部隊の活動拠点について

     救助部隊は被災現場近くに、部隊が集結し活動を準備し又は整備や休息などのために拠点が必要となります。通常、公園や学校のグランド、体育館などをお借りすることが多いのですが、この時はこれ以外にもパチンコ店や大型商店の駐車場などを使わせて頂きました。特に4部隊の現地指揮所と合同の調整所を現場近くのパチンコ店の駐車場に設置できたことで、朝夕の合同のミーティングや頻繁な部隊間の調整などにより、活動連携や上層部への一貫した報告が円滑に実施できました。また、現地に近いことから、被災者の方々からの情報入手や要望事項の把握が容易で4部隊で調整して対応できました。更に政府やマスコミ関係者の現地入りなどへの対応において、説明や案内等も円滑に実施できました。
     この時は、幸いにもパチンコ店や大型商店の御理解を得て多大なご支援を得ることができましたが、いざ災害の時に適した活動拠点を迅速に活用できるように、平素から自治体関係者のみならず、自治会や事業主等に対しても活動拠点の重要性などについて御理解を得る意義は大きいと考えます。

  • 準天頂衛星システムを草の根の市民安全の「みちびき」に

    寄稿No.11: 2017年2月

    日本市民安全学会 理事
    科学警察研究所 犯罪行動科学部
    犯罪予防研究室 特任研究官
    原田 豊

     市民安全学会に私が入会させていただいてから、まもなく5年になります。研究成果の「社会実装」という重い宿題と悪戦苦闘しながらも、皆様の温かい励ましを支えに進めてまいりました。おかげさまで、『聞き書きマップ』などの成果物を市民安全の取り組みの現場に届ける道筋が、ようやく見えてきた気がしています。
     今年、私たちの試みは、まさに正念場を迎えます。「日本版GPS」とも呼ばれる「みちびき(準天頂衛星システム)」が、いよいよ本格運用に向けて動き出すからです。

    「みちびき対応」にならなければ『聞き書きマップ』は完成しない

    私たちは「『簡単・安く』を極める」を合言葉に、『聞き書きマップ』の開発を行ってきました。外国製の安価なGPS受信機やICレコーダーを使うことで最初の購入価格をギリギリまで抑え、「維持経費(ほとんど)ゼロ」も実現しました。一方で、これまで使ってきたGPS受信機には、大都市のビル街などで測位の結果が大きく乱れること、品質管理が不十分で突然故障すること、などの欠点がありました。
     2018年から「4機体制」での運用が始まる「みちびき」は、これらの問題を抜本的に改善する可能性を持っています。4機のうち最低1機が必ず日本の天頂近くに見える独特の軌道を取るため、ビル街などでも安定した測位ができると期待されています。
     つまり、この「みちびき」に対応できて初めて、『聞き書きマップ』はほんとうに「完成」したと言えるのです。

    義務教育での普及を通じて全国民の手に

     「みちびき対応」ができたとしても、「社会への実装」の実現のためには、さらなる戦略が必要です。私たちは、「義務教育の現場」への普及が、その鍵になると考えています。
     そこで、昨年度から、文部科学省による「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」のお手伝いをしています。その初年度のモデル校となった小学校が(一社)地理情報システム学会の主催する「初等中等教育におけるGISを活用した授業に係る優良事例表彰」で、国土交通大臣賞を受賞しました。幸先のよいスタートを切ることができたと思っております。
     『聞き書きマップ』を使った安全点検活動は、新しい学習指導要領にも盛り込まれた「アクティブ・ラーニング」(体験学習)そのものです。また、2022年に高等学校の必修科目となる予定の「地理総合」を先取りする学習にもなります。準天頂衛星のしくみを活用することで、宇宙技術への興味を持ってもらうきっかけにもなるでしょう。つまり、つぎのような「実装への方程式」が、小中学校の現場で成立するのです。

    教育現場への実装 = (安全教育+地理教育+宇宙教育)×「体験学習」

     この方程式に沿って小中学校の現場への普及を図ることができれば、全国民にとっての「義務」教育というチャンネルを通じて、確実に国民一人ひとりに研究成果を届けることができます。これが、私たちの考える社会実装の戦略です。

    「ジャパン・クオリティ」の受信機開発で一気に実現を!

     ただし、この戦略が成功するためには、一つ重要な前提条件があります。学校現場に今あるパソコンと組み合わせて使える、準天頂衛星システムに対応し、安価で高い信頼性を備えた受信機の開発です。
     文部科学省によれば、2016年3月現在で、小中学校にある教育用コンピュータは、約96%がウィンドウズ系のパソコンです(下図)。

    教育用コンピュータのOS別割合(中学校)

     それ以外のパソコンや「スマホ」などは、学校現場には「ない」のです。ですから、小中学校の現場で「今すぐ使える」しくみとしては、『聞き書きマップ』のような「ウィンドウズ系パソコン用のソフトウェア」と、「安価な受信機」とを組み合わせる方法が、文字どおり唯一の選択肢なのです。
     そのような受信機を「作ってみよう」と手をあげてくださるメーカー様が、最近ようやく見つかりました。現在、これまでのGPS受信機・ICレコーダー・(最小限の)デジタルカメラの機能を1つにまとめ、行政などに「消耗品」として買っていただける新端末の開発をめざして、具体的な検討を進めています。

     最後に残された課題は、この開発を支援する資金援助を得ることです。それさえできれば、義務教育の現場への『聞き書きマップ』の実装が、一気に実現します。  私たちの2017年は、みちびき対応受信機の開発を軌道に乗せるべく、今まさに「ロケットスタート」を切ったところです。ぜひ皆様の応援をよろしくお願いいたします!

  • 2025年超超高齢化社会に向けて

    ~医療・介護・福祉・地域連携:シームレスなネットワークづくりとは何か~

    寄稿No.10: 2016年6月

    日本市民安全学会理事
    NPO浦安防犯ネット代表
    村瀬 恵子

     私は、医療機関に従事する傍ら、浦安市を中心に防犯ボランティア活動をしています。丁度、防犯ボランティア活動をして7年目を過ぎた頃、大きな壁にぶち当たりました。そんな時、日本市民安全学会に入会させて頂き、自分が悩み、苦しんでいた防犯活動に光を当てて頂き、学会主催のフォーラムや塾が「良き道しるべ」となり、現在に至っています。自分にとっては、日本市民安全学会=幸せ学会と讃えております。と言うのも学会が市民の目線に立って、防犯活動だけでははく様々な切り口で社会と連携し「市民の安全」を一緒に考える場だからです。
    そして今、医療も防犯ボランティアも、2025年に向け共通の大きな課題を抱えていることに気付き、私たちの活動の指針になる着地点について述べてみたいと思います。


     今後迎える“超超高齢化社会”に向けての連携構想や地域連携の在り方としては、①危機にも平時にも強い「安全で安心なまち」(地域社会)づくりと、②地域資源の最大限の活用が大切だと考えています。
     私の考える“未来志向型の超地域連携構想”とは、様々な機関と地域や組織を「超えて」、横断的な繋がりを持ち、技と知恵を出し合い、継続的に地域で安心して暮らせる環境づくりを創生することです。地域に散在する様々な人材を発掘育成し、共にまちづくりを推進してくこと、これがこれからの求められる「超地域連携コミュニティづくり=安全・安心なまちづくり」だと考えます。すなわち多職種多領域異業種連携構築が、市民活動参加へのきっかけやつながり(絆)となり、危機にも平時にも強い「安全で安心なまち」づくりに発展していくと思うからです。
     国が推奨する”地域包括ケアシステムは、まだまだ準備段階の手探り状態なのが現実です。確かに行政主導(官民連携・協働)も必要ですが、民民協働事業の構築なくして、皆さんや地域で暮らす高齢者の安全・安心はありません。山積する高齢社会の課題解決には、主役(住民)重視の目線や次世代の担い手との課題の共有(高齢社会教育)が大切だと思います。
     そこで私たちは、浦安(東京湾沿岸地区)に因んで「ベイエリア連携の会」(多職種連携の会)を立ち上げ、活動を開始しました。例えば、震災などの有事の際の医療だけでは解決できない困難な事例を想定して勉強会を開き、連携を深めつつ具体的な対応方法について知恵を出し合っています。
     私は医療の現場にいて、東日本大震災後、様々な要因によって経済的困窮者が増え、DVや虐侍および認知症患者が増えていると実感しています。医療や福祉の現場でも、一歩間違えれば暴力沙汰に発展するケースも増えているように思います。日頃からの警察との連携・人的ネットワークが本当に必要不可欠になっています。行政・警察・企業・民間のシームレスな繋がり、信頼と絆、知恵の輪の創造の中で、地域コミュニティの課題解決に真に役立つ知恵や安全・安心の環境づくり生きた提案ができると考えます。地域や職種を超えた、顔の見える心の通うネットワーク「ヒューマンネットワーク」こそが、安全で安心なまちづくりの要だと確信しています。資源や制度も大事ですが、人と人が繋がることで、安全活力は2倍にも4倍にもパワーアップします。 日本市民安全学会で学び経験させて頂いた事を活かし、地域力やさまざまな機関との調整や橋渡し役が担える繋ぎ人として頑張りたいと思います。
     最後に日本市民安全学会へ感謝の念と益々のご発展を祈念し、「幸せへの支援リレー」とします。

  • 厚木市のセーフコミュニティ国際再認証内定

    ~取組み宣言から7年、認証から5年~

    寄稿No.9: 2015年9月

    日本市民安全学会理事
    厚木市危機管理部長
    岩澤 栄一

    1 国際認証取得の経緯

     厚木市は、近年の少子・高齢化の急激な進展、都市環境の変化、市民の価値観やニーズの多様化、地域コミュニティにおける絆の希薄化など、市民の生活基盤構造や環境条件の変革により、①自殺や交通事故、子どもの安全を脅かす事案などの「事件事故の予防」、②事件等に巻き込まれる不安の「体感治安不安感の改善」、③「コミュニティの絆の再生」が、市民の関心が強い重要な課題でした。
    これらの地域課題の解決を図るため、7年前に取組み宣言を行い、平成22年11月19日に日本で3番目、世界で223番目のセーフコミュニティ(以下「SC」という。)国際認証を取得し、本年が再認証の年になります。

    2 セーフコミュティの理念

     「事故やけがは偶然の結果ではなく、予防することができる」という理念の下、官民一体となって市民の安心・安全を脅かす諸要因を科学的に明らかにし、コミュニティを基盤とした市民協働及び地域や関係機関、団体等の横断的な取組みによって、すべての市民の願いである「健康・安心・安全」の質の向上を目指す活動を積極的に展開してきました。

    3 取組みの概要と成果

    (1)「厚木市SC推進条例」の制定(平成24年10月11日)
      誰もが健康で安心・安全に暮らすことのできる良好な地域社会の実現に寄与するSC活動の継続を確保するために、全国初のSC推進条例をつくりました。
    (2)セルフモニタリングの導入
      各対策委員会が実施している対策プログラムの効果を検証するため、成果指標(KPI)を設定し、セルフモニタリングを導入しました。
    (3)「全国SC推進自治体ネットワーク会議」(会長 小林常良厚木市長)の設立(平成23年11月17日)
      SC活動や認証に関する情報交換、連携協力の強化を図るため、SC推進自治体間のネットワークを構築しました。当初、国内の9自治体でしたが、平成27年7月末現在では15自治体の参加を得ており、災害時の相互応援協定やウエブサイトの起ち上げにより、ネットワークの強化を図っています。
    (4)成果

    交通安全対策
    防犯対策
    子どもの安全対策
    自殺予防対策
    4 国際認証審査員による現地審査

     5年間の取組みと実績を、平成27年7月16日及び17日に行われた現地審査において報告したところ、2名のSC公認国際認証審査員から、次のような講評をいただき、7月20日付で、再認証の内定通知をいただくことができました
    ・G.シェーンボリ氏(WHO SC協働センタージェネラルマネージャー)
    「SCには、政治的なリーダーシップ、市民協働での取組み、この取組みへの行政の連動の3つの必須条件があるが、厚木市は、この条件をすべて満たしている。」
    ・チョ・ジュンピル氏(韓国 亜州大学医学部 救急医療部教授)
    「現地審査の報告を受けて厚木市の5年間の成果を見ることができ、大変嬉しく思う。外傷の減少、環境面の改善はもちろんのこと、厚木市が置かれている環境・状況に応じて対策委員会を再編するなど、より良い形を求めて対応していることを確認できた。是非、この成果を国内外に情報発信して欲しい。」

    5 終わりに

     SC活動の推進については、取組みの浸透拡大を図ることにより市民の意識の向上、取組みへの理解を深めるために、地域において市民が直接活動に携わる機会を提供していくことが必要であり、本市の掲げる市民協働により、SC活動をさらに強力に継続していきたいと考えております。
    なお、平成27年11月14日に再認証式典を開催いたしますので、皆様のご出席をお願い申し上げます。

  • 自主啓発映画制作20年を顧みて

    寄稿No.8: 2015年2月

    学会顧問   高木 裕己
    株式会社 映学社 代表取締役

    1 教育映像祭で受賞

     今年、弊社は創立20周年の節目の年を迎えました。“阪神・淡路大震災”を機に防災教育の必要性を強く感じ立ち上げた会社です。弊社の防災関連作品は、今では全国の各消防署等で活用され、社会貢献型の事業所と位置付けられてきました。
     弊社の作品は、平成26年度の教育映像祭で、文部科学大臣賞・最優秀作品賞が2作品、優秀作品賞が5作品の栄誉を賜ることになりました。
    この教育映像祭は、昭和29年から永きにわたって実施されている伝統ある映像祭です。
     平成26年は、百数十本の参加作品の中から、受賞作品が選ばれました。その中で、弊社の作品が数多く受賞できたのは、会員の皆様のご指導、ご協力の賜物だと深く感謝しています。
     ところで“啓発映画”は、官庁関係が制作予算を取って企画し配布するという形式が一般的です。しかし弊社は1995年創設以来、企画・制作・配給まで一貫した流れを自主制作で行っています。今までに400本近くの作品を制作してきました。

    2 啓発映画の課題

     “啓発映画”を自主制作するには、幾つかの課題があります。
     基本的に弊社の作品は公費で購入してもらえるように働きかけています。そのためには、社会の中で起きている問題を常にキャッチし、スピーディに話題性を取り入れ企画・制作することが必要です。また内容的にも、正確性、分かり易い構成力が問われています。
     そこで、その事を技術的に心掛けていることは、決してナレーションに頼らず、説得力のある“映像で語る”という事です。
     こうした制作の作業を積み重ねていく中で、様々なジャンルの著名な先生方からの監修を得られるようになってきました。弊社の作品は自主制作が主ですので、縛りがありませんし、常に監修者の意見を充分に反映するように心がけています。そのことも併せて、弊社の作品に信頼性が出てきているのではないかと自負しております。

    3 地域力強化のために

     最後に、弊社も日本市民安全学会に入会させて頂き、会員の方々のご協力で撮影場所の紹介、撮影協力者のご紹介など、また作品によっては、当会の推薦なども頂くなど大変お世話になっております。
     いま益々、少子高齢化が進展する中で、様々な問題が複雑化、陰湿化しています。そうした問題を解決する為のひとつは、“地域力”に期待が寄せられています。日本市民安全学会の取り組みの一つは、正に“地域力”をいかに強化するかの活動です。
     弊社も、微力ながら映像を通してその活動を支援していきたいと考えています。


    追記:高木裕己様 制作統括監督の作品『最期の願い どうする自宅での看取り』が、2015年5月6日、2015ワールドメディアフェスティバル(ドイツ・ハンブルク)にて、銀賞に選ばれました。


  • 「道のおもてなしデザイン」

    ーー英語表示だけではなく、安心・安全な 高速道路にーー

    寄稿No.7: 2015年2月

    学会理事   櫻田 秀美
    D&D STUDIO Inc.

     アメリカで勉強していた時、初めてドライブした所も、とても走り易かった。何故かなと思い出しながら東京の高速道路を考えてみました。
     カーナビを使っても初めて訪れる日本の道は不安ばかり。もっと親切な誘導表記が必要です。海外の旅人も、レンタカーで日本を親しんで欲しい。そこで、不安に感じる課題ごとに「道のおもてなしデザイン」を考えました。

    1 自分がどの道にいるか分かりにくい

     環状線なら右回り?左回り?が確認しにくいことです。そこで、環状路線と放射路線について考えました。
     例えば東京なら、環状路線は皇居を中心に光輪の様に暖色系で表記しつつ、色弱者の為に、「C2サークル矢印」も、外回りダブル線、内回りシングル線、それに東西南北を配置する。
     また放射路線には、皇居から離れて行く場合は緑系、都心へ向かう場合は青系とかにして、そこに 東西南北【NWES】 が付くと、どちらへ向かっているか分かりやすくなります。形体も、皇居や各都市に向かう場合、菊、梅、桜などの花紋を上部(行先側)に組み。郊外へ向かう場合は鳥、樹木、山、川、海などの景色紋を上部(行先側)に組むとか。

    2 出口誘導が不明瞭

     高速道路で一番不安なのが、出口誘導の不明瞭です。右か左か出口側も直前まで不明です。
     出口の名称が、3つ先まで確認できると安心します。また、出口の名前ですが、東京や、日本橋は無く「江戸橋」になっているなど、土地名と出口名が違う事もあるのです。やはり根本的な分かり易さを真剣に考える必要ありと思っています。
     3段階に【次の出口名】【2つ先の出口名】【3つ先の出口名】が順序良く分かると安心です。分かれ道の先も。そして【有名な地名表記】もあると慌てずに、近づく準備もできます。

    3 進入合流

     進入合流の為の長さは、加速の為にも少なくとも400m は必要だと思います。
     渋滞のせいか余裕の無いドライバーが多く、譲り合うマナーを日常から作らないと、海外からのお客様に怖い思いをさせてしまう・・・これが一番悲しい「おもてなし」です!
     日本の道、譲り合いマナーを早急に普及させましょう!

    4 地域の特色を絵文字で表記

     道路標識の他に、英語だけでなく地域らしい絵文字で「Welcome to Japan」を表すことはできないでしょうか。新幹線でも、京都駅・東京駅も同じに見えます。それでは寂しいです・・・県境・市境などの表示板は安全な範囲で、もっと美しく楽しくPRして欲しいと思います!

  • 「こころ ひとつに未来輝くまちづくり」とするために

    ―これからの市民安全と超連携社会のあり方―

    寄稿No.6: 2014年10月

    学会会長 石附 弘

     3.11後に発表された2 大巨大地震に関する国の予測を基礎とした新たな対策基本法の制定と国・自治体・企業・地域・市民挙げての基本計画の決定(2014.3.28)、国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)法の制定と基本計画の閣議決定(2014.6.3)
     皆さんは、これらの基本計画をお読みになりましたか?
     今、私たちは、2 大巨大地震への備えとともに、気候変動に伴う記録的豪雨・土石流・大規模台風・竜巻の頻発等全国的なこれまで経験のない「自然災害への新たな備え」と、人類が経験したことがない超少子・超超高齢化等「急激な社会基盤の変動への備え」、ネット社会のサイバーテロの脅威、暴走自動車や危険ドラッグなどの「新たな社会的脅威への備え」が求められています。

     もし、後世の人が今の日本を時代区分するとすれば、「災後」の新時代と呼ぶかもしれません。即ち、敗戦後のゼロからの復興に官民挙げて取り組んだ「戦後」時代と同じように、今、私たちは、眼前の「3つの現在する危機」に対して、これまでの平和が長かった時代とは異なる発想と方法で、危機意識をもち官民の総力を挙げて「明日への備えをなすべき時代」に突入したと言っても過言ではありません。
     このような諸情勢を踏まえれば、これからの「未来輝くまちづくり」とは、「危機にも平時にも強いタフでしなやかな地域社会づくり」であり、関係機関団体・学校・NPO・異業種異分野・地域等が、世代・時空を超えて、こころひとつに「未来志向型の超連携社会」を構築していくことが求められていると思います。3つの危機を恐れ臆するのではなく、「正しく備えること」こそが重要なのです。「知性の悲劇、楽観の意思」(ロマンローラン)という言葉もあるではありませんか。人類は、常にその「楽観の意思」「未来への意思」が、誰もが困難と思ったことを克服し、新しい時代を切り拓いてきました。

    次世代「共生から共働への社会の変革」の担い手育成への視座
    (Transdisciplinary)

     しかし、超連携社会づくりは、異なる文化間の「真の相互理解や協働」であり、そう生易しいものではありません。自分が正しいと皆考えているからです。自分の考えを変えることに臆病になるからです。
     国際社会でも変化が起きています。2001年11月、第32回ユネスコ総会「文化多様性に関する世界宣言」)において、異なる文化間の相互理解を深め,寛容,対話,協力を重んじる異文化間交流を発展させること、さらには、「自己の存在のために他者(非自己)の存在は不可欠」という認識、「自分は他のすべてによって生かされている」という存在把握が,新しい価値創造の源泉であり、ひいては世界の平和と安全に繋がるという考え方が、人類の普遍的な価値として国際社会で広く認められるようになり、今、世界では、これを推進するためには、領域横断的アプローチ (Transdisciplinary)が必要であるとの指摘がなされているからです。
     私たちは、異質性への寛容社会、多様性との共生が、21世紀「文化の世紀」のキーワードであることを知り、浦安大会に参加の全国から各界の専門家・実務家・地域のコミュニティリーダーが、その立場・文化・領域等を超えて、内外の先進事例等についてその知見を分かち合い学び合うことが、WHO推奨世界基準の安全・安心まちづくり「セーフコミュニティ精神」であり、現実的・実践的には、例えば、発災蒔における避難所運営にも、平時における地域生活安全活動にも通底する普遍的考え方であることに、もっと早く気付くべきだったのではないでしょうか。「釜石の奇跡」は、学校コミュニティを場とする8年にわたる超連携社会づくり(BCP)が、「奇跡」の原点であったことを社会実証しました。

    (2014.10.15記)

  • 市民の安全・安全のための私の犯罪者に対する更生活動について

    寄稿No.5: 2014年3月

    学会理事 大川 哲次
    公益財団法人全国篤志面接委員連盟常任理事
    大阪犯罪被害者支援アドボカシーセンター副代表理事
    弁 護 士

     私は、現在大阪市北区内で弁護士業をしながら、ボランティア活動として近畿地区の刑事施設(刑務所・拘置所)や少年施設(少年院)の矯正施設7ヶ所で篤志面接委員活動を長年にわたり行っている。篤志面接委員とは、矯正施設まで定期的に直接出向いて行って、それら施設の中で収容されている受刑者や少年たちに対して、面接や指導、教育を行い、その改善更生と社会復帰を手助けする民間ボランティアである。全国でいろいろな職業や経歴の約1800人の人たちが、法務省から正規の委嘱を受けて一生懸命に活動している。

     過去の統計上矯正施設の入所者の半数以上を再犯者が占めており、犯罪の約6割を約3割の再犯者が起こしている。刑務所や少年院からの出所者の再犯を防止し、いかにうまく社会復帰に導くかは市民の安心・安全を守る犯罪のない社会を築き上げるための一番の急務の課題と言える。刑事司法手続きには、①捜査(警察・検察官)、②刑事裁判・少年審判(裁判所)、③矯正(刑務所・少年院)、④更生保護(保護観察所、厚生保護施設等)の4段階がある。犯罪者の再犯の防止とその更生のために直接関与するのは、第3段階の矯正と第4段階の更生保護である。私は、矯正段階で篤志面接委員として関与している。

     平成7年5月に約100年ぶりに旧監獄法が全面的に改正され、新たな刑事施設法が成立した。その趣旨は、刑務所における作業中心の旧監獄法のもとでは出所者の再犯が一向に減少せず、犯罪者に対する更生教育が十分に成果をあげることができなかったことからの反省である。そのため、新法では、作業だけでなく、それまでにも行われていた刑執行開始時の指導と釈放前の指導の他に、受刑者に対する改善指導や教科指導の矯正指導が行われることになった。一般改善指導とは、犯罪の責任を自覚させ、健全な心身を培わせ、社会生活に適応するために必要な知識や生活態度を習得させるために全ての受刑者に行われている指導である。特別改善指導は、改善更生や円滑な会復帰に支障を来たす受刑者の個別の事情を改善するために行う指導であり、①薬物依存離脱指導、②暴力団離脱指導、③性犯罪再犯防止指導、④被害者の視点を取り入れた教育、⑤交通安全指導、⑥就労支援指導の6種類がある。私は、最近においては、奈良少年刑務所と大阪医療刑務所と和歌山刑務所における一般改善指導としての被害者感情理解指導、大阪刑務所における特別改善指導の一つの被害者の視点を取り入れた教育、和歌山刑務所における就労支援指導を行っている。更にそれに加えて大阪拘置所においては仮釈放前指導も行っている。

     犯罪統計では、満期出所者のうち、約半数が親族等の受入先がない受刑者(適当な帰住先のなかった者の約6割が1年未満に再犯に及んでいる)で占められている。そのような受刑者の中で高齢もしくは障害のため社会内での自立が困難な者が全国で一年間に約1000人にも及んでいる。それら出所者の再犯率が高くなるのは必然であって、福祉や医療支援等の司法と福祉を結び付けて行う再犯防止施策の実施が強く求められている。

     私たち篤志面接委員の役割としては、今後は単に矯正施設内における矯正教育の活動のみならず、犯罪者の出所後の更生保護の段階まで可能な範囲でその活動の場を広げていく必要がある。更には犯罪者を生んでしまったのは地域社会全体の責任とも捉えられるのであるから、それら犯罪者の更生と自立についても地域社会全体の責務であるという意識を地域社会の人たちに植えつけていく運動を展開していきたい。その地域社会全体が出所する犯罪者の受け皿となったり、その就労を支援する等で犯罪者の更生に積極的に協力・寄与することによって、初めて市民の安心・安全は図られていくものと考える。

  • LED・防犯灯を通じた関西地区での市民安全実践活動

    寄稿No.4: 2014年1月

    学会顧問 須谷修治

     私は、日本市民安全学会発足当初から会員として活動し、専門が「防犯照明」であることから、明るいまちづくりによる地域の安全・安心を訴えて参りました。特に、青色防犯灯が社会的にも話題となった時期には、全国各地で実態調査や講演を行いました。

     しかし、学会会員の皆さんと交流をする中で、防犯照明は地域の防犯対策の一助であり、防犯そのものをもっと広く考えねばならないと思うようになりました。
    関西には、全国的にも名を知られている神戸市・北須磨団地の西内勝太郎会長様、堺市・登美丘地区(現NPO法人 さかいhill-front forum 理事長)池﨑 守会長様らが居られ、いろいろと教えて頂き10年以上もお付き合いをさせて頂いています。

     かつて、大阪府生活文化部が主催して「安全なまちづくり・リーダー養成講座」が開講され、府下全域の自治体・地域防犯団体などが参加して開催され、私も参画させて頂いていました。しかし、担当者が転任するなどの理由から5年間で終わってしまいました。大変、有意義な講座であったと思います。犯罪発生が長年にわたり常に全国ワースト1の大阪としては、是非再開して欲しい講座です。

     日本市民安全学会の活動としては、毎年「関西研修会」が開催されており、東京からも多くの会員が参加され、交流ができて喜ばしいことであります。今年は、2月に記念すべき第10回大会が亀岡市で開催されることになり、11月には関西研修会が予定されています。
    楽しみにしています。

     一方、東南海・南海地震の話題が高まる中、新聞・テレビの報道は“防災・減災”ばかり、防犯が置き去りになっている感がして危惧されるところです。
    私の専門の防犯照明については、防犯灯が急速にLED灯化する中で、照明学会が神戸市から業務委託を受け、LED道路灯・防犯灯の実態調査等を行いました。それらの成果から、現在各社から販売されているLED防犯灯の性能・品質はバラバラ、後2、3年しないと安定した製品にはならないということが分かりました。

     最後に、日本市民安全学会の更なる発展をお祈り致します。



  • 危機への備えは、タフでしなやかな安全・安心まちづくりから

    寄稿No.3: 2014年1月

    学会理事 山内 勇
    京都府亀岡市 政策推進室長

     亀岡市は、「安全・安心こそ最大の福祉」をスローガンに掲げ、産・学・民と行政が連携してセーフコミュニティ活動を展開してきたことが認められ、昨年2月、セーフコミュニティ再認証を得ました。

     我々はこの機会に、「セーフコミュニティの安全・安心まちづくり理念」を再確認し、安全についての知見を広め、そのさらなる浸透に努め、地域の安全の質の向上を図っていくことを決意いたしました。
    他方、私たちの努力にもかかわらず、未曾有の自然災害や虐待・自殺問題への対処、孤立する住民への対応、暴走による交通事故、ストーカーやサイバー犯罪対策等々新たな危険への対処が喫緊の課題となっています。

     そこで、再認証取得1周年にあたる本年2月に、「セーフコミュニティで創るこれからの安全・安心社会~危機への備えは、タフでしなやかな安全・安心まちづくりから~」をテーマに、「市民安全・安心フォーラムinかめおか2014」を開催いたします。
    日本市民安全学会第10回記念大会との共催で開催するこのフォーラムでは、セーフコミュニティ活動が、平時にも危機にも極めて有効な安全ツールであることを具体的に示しつつ、さらなる推進強化を図っていきたく考えています。

     基調講演では、新時代における安全・安心像と自転車生活での安全についての提言を、また分科会では、「子供・学校の安全」、「高齢者の安全」、「交通安全」、「自殺予防・虐待防止」、「防災・防犯」のテーマで、先進的な活動や効果ある事例について発表をいただき、共に考え共に行動できる一助になればと期待しております。

     私も、精一杯のおもてなしをさせていただきますので、多くの皆さまのご参加いただけるのをお待ちしております。

     また、当日の午前中には、「京都式介護予防プロジェクト」として3年間研究してきました成果発表を行います。 医療費も含めた介護予防事業の効果発表を行いますので、あわせて参加いただければと、ご案内させていただきます。

  • 変化する犯罪に対する「知識による防御」

    寄稿No.2: 2013年11月

    学会会員 濱田宏彰
    セコムIS研究所リスクマネジメントグループ

     日本市民安全学会が2004年に活動をスタートしてから、まもなく10年が経とうとしています。その間に、犯罪件数は大きく減少しました。2004年の刑法犯認知件数は256万件でした。それが、昨年2012年には138万件にまで減少しました。2002年に犯罪件数がピークを迎え、最重要課題として市民の安全が掲げられました。官民挙げての治安対策が功を奏して、今日の状況にまで改善されたものと考えられます。
    このように、数字上の治安レベルとしては、大きく改善されましたが、市民の感じる治安レベルはいかがでしょうか。市民の不安の根底には、ひったくり、強盗などのリアルワールドでの犯罪とは別に、サイバー空間での犯罪や、人をだまして金品を奪う詐欺などの犯罪があるような気がします。実際、リアルワールドでの現金の流通量は減少し、現金の授受のいらない電子決済がどんどん広がっています。さらに、来年4月に消費税がアップして、8%という中途半端な値になります。小銭の支払いが、ますます面倒くさくなるということです。そうなると、さらに電子マネーの使用が増えるかもしれません。このような状況においては、犯罪者が狙うのは現実のマネーではなく、電子通貨を狙うようになるのは自然の流れといえます。

     実際に、最近の犯罪の傾向としては、インターネットバンキングの不正送金が過去最高を記録しています。さらに、窃盗によって、物理的に金品を盗んでもたかが知れている状況になったため、人をだましてお金を巻き上げる手口が横行するようになりました。その代表が、いわゆる振り込め詐欺です。こちらの手口も日々進化を続けており、いままで聞いたこともないような方法で、市民のお金が狙われています。このような新しい犯罪に立ち向かうには、その犯罪手口が発覚した段階で、いかに早く市民に知らしめるかではないかと思います。振り込め詐欺などは市民への認知が進み、警察や金融機関だけではなく、市民の力によって犯罪が抑止されたケースを目にすることが多くなりました。「知識」として、犯罪の手口を知っておくことは、最大の防御となりうるのです。

     こうした観点から、みなさんの「知識」に役立つような安全・安心に関するコラムを、セコムでは「月~金フラッシュニュース」と題して、Webサイト上で毎日発信しています。「知識による 防御」のお手伝いが少しでもできればという思いで執筆しております。また、日本市民安全学会でも、「変化する犯罪に対する知識による防御」を含め各種研 修会を行っており、良い学びの機会となっているものと思います。


    セコム安心マガジン「月~金フラッシュニュース」(http://www.secom.co.jp/flashnews/)

  • 組織と広報活動

    寄稿No.1: 2013年8月

    学会理事 鈴木英夫

    ひょんなことから市民安全学会のホームページの管理人を引き継ぐことになり、ホームページという広報媒体について考えたり工夫したりする機会をいただきました。私の前任者はウインドウズでホームページを作成していましたが、私はマックの利用者ですので、引き継いだままの状態でホームページを管理することが出来ませんでした。そんな事情で、もとからホームページの構造もデザインも作り直さざるを得ませんでしたので、2012年11月からこのようなスタイルになっています。
     さて、少々理屈っぽい話しになりますが、組織に取って広報とは何かという考察をしました。個人は存在しているだけで価値があり、生きる意味がある、というのが教育的考え方です。だから、知的で社会的適応力に優れた生徒も、自閉的で人と関わることが好きでない生徒も、攻撃的で集団を混乱させる傾向の強い生徒も、人間としての存在価値は全く同じですし、誰もが尊重され成長の機会が均等に保証されていることを伝え続けるのか学校教育の役割です。
     一方、社会集団はそうはいきません。社会集団は社会から存続を許された時だけ存在でき、信頼を失えば自ら解散するか、強制的に解散させられるかして、存在そのものを失います。会社、学校、政党、宗教団体など社会集団は、学校教育的にどのような個人であっても尊重されるのとは違い、信頼を失ったら存在できません。
     組織が信頼を担保するためには、会員、組織、経理等がきちんとしていることはもちろんですが、組織の活動を社会に広報し、理解を得ることも必要です。現代ではホームページという広報媒体があり、低コストで広く広報できます。
     ホームページを引き継ぎリニューアルするにあたって考えたことは三つです。1、デザインは市販のソフトを購入することで見やすいデザインにすること。2、コンテンツを組織に関すること、総会大会に関する記事、フォーラム等に関する記事、リンクページの4つのカテゴリーに大別すること。3、ホームページの階層はなるべく浅く作り、閲覧者がどの記事がどこにありそうかすぐに分かるようにすること。以上の原則でホームページの管理をはじめました。素人管理ですので不具合もありますが、会員の皆様のご意見をいただいてより分かりやすいホームページを目指して行きたいと思います。

  • 会員寄稿コーナー『大地と光』

     2013年7月の理事会で、会員による寄稿を広報するコーナー「大地と光」を新設することが決まりました。本学会も会員数が増加し、会員の発表の機会が総会、フォーラム等の勉強会だけでは不足するようになりました。そこで、現在策定中のロゴマークの意匠コンセプトである「大地と光」を寄稿コーナーの名称とし、会員の知見の交流の場を設けることにしました。また、緊急課題等への問題提起に着いては「特別寄稿」を掲載することも検討します。会員寄稿については、概ね2ヶ月に1本の間隔により、以下の要領で、寄稿依頼、ホームページ管理委員会の手順を経て、掲載するものとします。

    市民安全学会HP「大地と光のコーナー」投稿要領
    1. 内容 市民安全及び安心社会の創造に関する内容であること
      (例:事件事故等への所感、コメント、町づくりの視点や考え方、現場活動報告等)
    2. 執筆者 市民安全学会会員
    3. 文字数 700字~1200字
    4. 体裁  タイトル、会員氏名、所属等、本文
    5. 執筆依頼 原則として、会長及び理事会から本人宛依頼する
    6. 掲載までの手順
      1. HP管理委員(当面)原稿提出
      2. 体裁を整えて、会長及びHP管理委員に回議
      3. HP委員で掲載可否、修正依頼箇所等を検討
      4. 執筆者による内容確認ののち掲載