寄稿No.2: 2013年11月

学会会員 濱田宏彰
セコムIS研究所リスクマネジメントグループ

 日本市民安全学会が2004年に活動をスタートしてから、まもなく10年が経とうとしています。その間に、犯罪件数は大きく減少しました。2004年の刑法犯認知件数は256万件でした。それが、昨年2012年には138万件にまで減少しました。2002年に犯罪件数がピークを迎え、最重要課題として市民の安全が掲げられました。官民挙げての治安対策が功を奏して、今日の状況にまで改善されたものと考えられます。
このように、数字上の治安レベルとしては、大きく改善されましたが、市民の感じる治安レベルはいかがでしょうか。市民の不安の根底には、ひったくり、強盗などのリアルワールドでの犯罪とは別に、サイバー空間での犯罪や、人をだまして金品を奪う詐欺などの犯罪があるような気がします。実際、リアルワールドでの現金の流通量は減少し、現金の授受のいらない電子決済がどんどん広がっています。さらに、来年4月に消費税がアップして、8%という中途半端な値になります。小銭の支払いが、ますます面倒くさくなるということです。そうなると、さらに電子マネーの使用が増えるかもしれません。このような状況においては、犯罪者が狙うのは現実のマネーではなく、電子通貨を狙うようになるのは自然の流れといえます。

 実際に、最近の犯罪の傾向としては、インターネットバンキングの不正送金が過去最高を記録しています。さらに、窃盗によって、物理的に金品を盗んでもたかが知れている状況になったため、人をだましてお金を巻き上げる手口が横行するようになりました。その代表が、いわゆる振り込め詐欺です。こちらの手口も日々進化を続けており、いままで聞いたこともないような方法で、市民のお金が狙われています。このような新しい犯罪に立ち向かうには、その犯罪手口が発覚した段階で、いかに早く市民に知らしめるかではないかと思います。振り込め詐欺などは市民への認知が進み、警察や金融機関だけではなく、市民の力によって犯罪が抑止されたケースを目にすることが多くなりました。「知識」として、犯罪の手口を知っておくことは、最大の防御となりうるのです。

 こうした観点から、みなさんの「知識」に役立つような安全・安心に関するコラムを、セコムでは「月~金フラッシュニュース」と題して、Webサイト上で毎日発信しています。「知識による 防御」のお手伝いが少しでもできればという思いで執筆しております。また、日本市民安全学会でも、「変化する犯罪に対する知識による防御」を含め各種研 修会を行っており、良い学びの機会となっているものと思います。


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