~取組み宣言から7年、認証から5年~

寄稿No.9: 2015年9月

日本市民安全学会理事
厚木市危機管理部長
岩澤 栄一

1 国際認証取得の経緯

 厚木市は、近年の少子・高齢化の急激な進展、都市環境の変化、市民の価値観やニーズの多様化、地域コミュニティにおける絆の希薄化など、市民の生活基盤構造や環境条件の変革により、①自殺や交通事故、子どもの安全を脅かす事案などの「事件事故の予防」、②事件等に巻き込まれる不安の「体感治安不安感の改善」、③「コミュニティの絆の再生」が、市民の関心が強い重要な課題でした。
これらの地域課題の解決を図るため、7年前に取組み宣言を行い、平成22年11月19日に日本で3番目、世界で223番目のセーフコミュニティ(以下「SC」という。)国際認証を取得し、本年が再認証の年になります。

2 セーフコミュティの理念

 「事故やけがは偶然の結果ではなく、予防することができる」という理念の下、官民一体となって市民の安心・安全を脅かす諸要因を科学的に明らかにし、コミュニティを基盤とした市民協働及び地域や関係機関、団体等の横断的な取組みによって、すべての市民の願いである「健康・安心・安全」の質の向上を目指す活動を積極的に展開してきました。

3 取組みの概要と成果

(1)「厚木市SC推進条例」の制定(平成24年10月11日)
  誰もが健康で安心・安全に暮らすことのできる良好な地域社会の実現に寄与するSC活動の継続を確保するために、全国初のSC推進条例をつくりました。
(2)セルフモニタリングの導入
  各対策委員会が実施している対策プログラムの効果を検証するため、成果指標(KPI)を設定し、セルフモニタリングを導入しました。
(3)「全国SC推進自治体ネットワーク会議」(会長 小林常良厚木市長)の設立(平成23年11月17日)
  SC活動や認証に関する情報交換、連携協力の強化を図るため、SC推進自治体間のネットワークを構築しました。当初、国内の9自治体でしたが、平成27年7月末現在では15自治体の参加を得ており、災害時の相互応援協定やウエブサイトの起ち上げにより、ネットワークの強化を図っています。
(4)成果

交通安全対策
防犯対策
子どもの安全対策
自殺予防対策
4 国際認証審査員による現地審査

 5年間の取組みと実績を、平成27年7月16日及び17日に行われた現地審査において報告したところ、2名のSC公認国際認証審査員から、次のような講評をいただき、7月20日付で、再認証の内定通知をいただくことができました
・G.シェーンボリ氏(WHO SC協働センタージェネラルマネージャー)
「SCには、政治的なリーダーシップ、市民協働での取組み、この取組みへの行政の連動の3つの必須条件があるが、厚木市は、この条件をすべて満たしている。」
・チョ・ジュンピル氏(韓国 亜州大学医学部 救急医療部教授)
「現地審査の報告を受けて厚木市の5年間の成果を見ることができ、大変嬉しく思う。外傷の減少、環境面の改善はもちろんのこと、厚木市が置かれている環境・状況に応じて対策委員会を再編するなど、より良い形を求めて対応していることを確認できた。是非、この成果を国内外に情報発信して欲しい。」

5 終わりに

 SC活動の推進については、取組みの浸透拡大を図ることにより市民の意識の向上、取組みへの理解を深めるために、地域において市民が直接活動に携わる機会を提供していくことが必要であり、本市の掲げる市民協働により、SC活動をさらに強力に継続していきたいと考えております。
なお、平成27年11月14日に再認証式典を開催いたしますので、皆様のご出席をお願い申し上げます。