―これからの市民安全と超連携社会のあり方―

寄稿No.6: 2014年10月

学会会長 石附 弘

 3.11後に発表された2 大巨大地震に関する国の予測を基礎とした新たな対策基本法の制定と国・自治体・企業・地域・市民挙げての基本計画の決定(2014.3.28)、国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)法の制定と基本計画の閣議決定(2014.6.3)
 皆さんは、これらの基本計画をお読みになりましたか?
 今、私たちは、2 大巨大地震への備えとともに、気候変動に伴う記録的豪雨・土石流・大規模台風・竜巻の頻発等全国的なこれまで経験のない「自然災害への新たな備え」と、人類が経験したことがない超少子・超超高齢化等「急激な社会基盤の変動への備え」、ネット社会のサイバーテロの脅威、暴走自動車や危険ドラッグなどの「新たな社会的脅威への備え」が求められています。

 もし、後世の人が今の日本を時代区分するとすれば、「災後」の新時代と呼ぶかもしれません。即ち、敗戦後のゼロからの復興に官民挙げて取り組んだ「戦後」時代と同じように、今、私たちは、眼前の「3つの現在する危機」に対して、これまでの平和が長かった時代とは異なる発想と方法で、危機意識をもち官民の総力を挙げて「明日への備えをなすべき時代」に突入したと言っても過言ではありません。
 このような諸情勢を踏まえれば、これからの「未来輝くまちづくり」とは、「危機にも平時にも強いタフでしなやかな地域社会づくり」であり、関係機関団体・学校・NPO・異業種異分野・地域等が、世代・時空を超えて、こころひとつに「未来志向型の超連携社会」を構築していくことが求められていると思います。3つの危機を恐れ臆するのではなく、「正しく備えること」こそが重要なのです。「知性の悲劇、楽観の意思」(ロマンローラン)という言葉もあるではありませんか。人類は、常にその「楽観の意思」「未来への意思」が、誰もが困難と思ったことを克服し、新しい時代を切り拓いてきました。

次世代「共生から共働への社会の変革」の担い手育成への視座
(Transdisciplinary)

 しかし、超連携社会づくりは、異なる文化間の「真の相互理解や協働」であり、そう生易しいものではありません。自分が正しいと皆考えているからです。自分の考えを変えることに臆病になるからです。
 国際社会でも変化が起きています。2001年11月、第32回ユネスコ総会「文化多様性に関する世界宣言」)において、異なる文化間の相互理解を深め,寛容,対話,協力を重んじる異文化間交流を発展させること、さらには、「自己の存在のために他者(非自己)の存在は不可欠」という認識、「自分は他のすべてによって生かされている」という存在把握が,新しい価値創造の源泉であり、ひいては世界の平和と安全に繋がるという考え方が、人類の普遍的な価値として国際社会で広く認められるようになり、今、世界では、これを推進するためには、領域横断的アプローチ (Transdisciplinary)が必要であるとの指摘がなされているからです。
 私たちは、異質性への寛容社会、多様性との共生が、21世紀「文化の世紀」のキーワードであることを知り、浦安大会に参加の全国から各界の専門家・実務家・地域のコミュニティリーダーが、その立場・文化・領域等を超えて、内外の先進事例等についてその知見を分かち合い学び合うことが、WHO推奨世界基準の安全・安心まちづくり「セーフコミュニティ精神」であり、現実的・実践的には、例えば、発災蒔における避難所運営にも、平時における地域生活安全活動にも通底する普遍的考え方であることに、もっと早く気付くべきだったのではないでしょうか。「釜石の奇跡」は、学校コミュニティを場とする8年にわたる超連携社会づくり(BCP)が、「奇跡」の原点であったことを社会実証しました。

(2014.10.15記)