2019年6月29日
[主催]日本市民安全学会
[場所]有楽町国際ビル8F・日本倶楽部
[テーマ]
平成時代の安全安心を振り返って~ 第2回クロストーキング~
昨年末に行われた第1回に引き続き、全員参加のクロストーキング形式で、学会会員の皆様に自由に語っていただきました。前回に引き続き、堀内裕子氏の司会により進められました。
法学系の博士学位の取得方法について
(日本大学法学部助教 西山智之氏)
法学系の大学院における博士号の取得について、博士論文を書く手順や審査方法等を、実体験に基づきお話ししていただきました。現在は博士号の取得方法として、大学院の博士後期課程(博士課程)を修了し取得する「課程博士」と、課程への在籍を問わず論文を大学に直接提出し取得する「論文博士」の2つの方法があるとのことでした。今後は博士号の取得方法としては大学院の博士後期課程を経た「課程博士」が主流となっていくのではないかというお話でした。
シンガポールはなぜ安全なのか
(シニアライフデザイン 堀内裕子氏)
観光客の目線では感じ取ることができない、真のシンガポールについてお話ししていただきました。非常に安全な国ということで、夜でも子どもが歩けたり、飲食店でテーブルにケータイを置いて場所取りをしても大丈夫だったりと、治安はいいようです。それもそのはず、至る所に大量のカメラが取り付けられており、すべての行動が把握されているようです。さらに、SGセキュアという仕組みで、市民の目で防犯が成り立っており、アプリを使って市民が通報できる仕組みもあるそうです。ただし、凶悪な強盗や強姦は少なくないとのことです。また、街中に高級車の自動販売機があるそうで、その場でクルマが買えるという驚きの街とのことでした。
教師を育てる仕事 (神奈川大学特任教授 鈴木英夫氏)
中学・高校の社会科教師や校長を務め、現在は大学で教師志望の大学生を指導されています。今回は、学校における教育の在り方、社会科教育法についてお話ししていただきました。子供が好きというだけで先生になろうとする考え方は、ある意味で危険であり、子どもたちが成長する姿を見るのが好きというスタンスが大切であるとのことでした。また、定時制高校などにも従事された経験から、生徒たちの気持ちに寄り添った授業の進め方を考えるようになったとのことです。頭ごなしに叱りつける方法ではなく、子どもたちの良い気づきに出会ったときは、素直にほめることも大事であるとのことでした。
街の中でのピクトグラム
(アイデア・ギルド代表取締役 鈴木肇氏)
安全・安心のためのマークとして、さまざまな所でのピクトグラムやキャラクターのデザインついてお話ししていただきました。文字は世界に様々ありますが、ピクトグラムやキャラクターは、世界共通で大体が視覚伝達され、認識されやすくなっています。神奈川県県内を中心に、駐車場や球場、商店街などで目に留まりやすいデザインとして作成されています。文字のフォントについても気を配られていて、明朝体よりゴシック体の方が遠くから見たときに認識しやすいそうです。その意味からも交通標識に使用されているとのことです。
ネットショッピングについて
~ネットショッピングを楽しく利用するために~
(消費生活コンサルタント 木村嘉子氏)
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の一員として、消費生活コンサルタントとして活動されているとのことです。最近の活動のひとつの中から、安全・安心にネットショッピングをするためのポイントをわかりやすく解説していただきました。購入しようとするサイトの安全性、連絡先や返品についての記述があるかどうか、通信販売にはクーリングオフ制度がないために、返品についての記述が重要とのことです。近年では、ネットで買い物をすることが普通に行われるようになっており、安全性についてのチェックがおろそかになりがちです。頭の中で“ちょっと待って”と確認する姿勢が大切とのことでした。
日本公衆電話会の活動と「こども手帳」作成秘話
(日本公衆電話会 田島敏明氏)
地域の安全・安心に貢献するために活動する中で、子どもたちの安全・安心の意識付けのための小冊子の作成および配布を行っているとのことで、今回は「こども手帳」や「ネット安全ガイドブック」についてお話ししていただきました。前者は小学生向けとして、後者は中学生向けとして作成されており、生活するうえで自分の身を守る方法について具体的な事例を交えながらまとめられているとのことです。また、ケータイやスマホしか知らない子どもたちに、いざという時のための公衆電話の使い方を教える勉強会などを開催しており、その活動についてもお話ししていただきました。
社会的な免疫をつくれないか?
(東京工業大学教授 西田佳史氏)
子どもにまつわる事故は枚挙にいとまがありません。これまで行われてきた調査研究についてお話ししていただきました。ベビーチェアを普通に使っていたのに死亡事故になった事例や、野外保育中に墓石が倒れ死亡に至った事例など、現場の人が頑張るだけでは事故は予防できません。一方で、日々、新たに生み出される対象に対するリスクに関して、非常にうまく対応している仕組みとして、体内の多種多様な白血球を中心としたエコシステムである「免疫系」があります。人工知能やIoT技術を活用することで、ある種の免疫系を社会的な仕組みとして作り出し、日々、新たに生み出されるリスクを扱うことが可能な時代が来ているとのことでした。
皇居勤労奉仕 (日本防犯設備協会特別講師 富田俊彦氏)
皇居内の清掃奉仕活動についてお話ししていただきました。あさま山荘事件の隊長の奥様が活動されていたことがきっかけで、この活動に参加されているとのことでした。「伊勢敬神団」の一員として、連続4日間の奉仕活動を行い、普段目にすることのできないパワースポットを清掃できる喜びを感じたそうです。最後に、昭和天皇陛下御製の歌を披露していただきました。
「戦いに 敗れしあとの 今もなお 民のより来て ここに草とる」
勤労奉仕団に対して、昭和天皇が感謝のお気持ちを詠まれたものとのことです。
今回は、8名の会員に自由にお話していただきましたが、自然と安全安心に関することに話題が移っていくところが、日本市民安全学会らしいクロストーキングでした。短い時間で話題をまとめていただきましたが、もっと詳しいところまで聞いてみたい内容ばかりでした。