NPO法人e-Lunch (イーランチ) 理事長 松田直子
はじめに:NPO法人e-Lunch(イーランチ)について
まず、イーランチのことを紹介します。2000年のこと、静岡県焼津市で、幼児や小学校低学年の子どもをもつパソコン好きの母親たちが、子どもたちにはインターネットやパソコンを安全に活用できるようになってほしいと、子どもが学校に行っているランチタイムに集まって勉強会を始めました。母親たちは勉強会で得た成果を社会に役立てたいと2003年、NPO法人を立ち上げ、「母親目線」での啓発活動を始めました。 以後、小・中・高の児童・生徒たち向けの「ネット安全安心講座」、小学生とその親を対象とした「親子講座」、スマホのある幼児期の子育てを考える保護者向けの講演会等を開催しています。2007年からはネットトラブル未然防止のための「学校ネットパトロール」もしています。
1.保護者による管理と見守り(他律)から始まる子どものスマホ利用
令和4年の内閣府の調査では、小学生の6割強、中学生の9割、高校生のほぼ全員がスマホを持っています。このような状況にある今、保護者としては、子どもにスマホをせがまれる前に、スマホ利用について前もって考えておくことが大切です。
スマホ時代の子育てのゴールは、子どもが道徳心と判断力をもった「自律」の状態で巣立つことです。それまでは、親子の間でスマホ利用のルールを決める、安全設定をかけるなど、保護者による管理と見守り、即ち「他律」が必要です。他律から始まるスマホ利用は徐々に「自律」の割合を増しますが、小学生の段階では他律が7割程度です。
学齢期の子どもの保護者の不安は、「ネット依存」です。ネット依存は心身の発達を害するほか、睡眠不足や不登校などの問題を招きます。2018年にはWHOが、ゲームにのめり込む状態を「ゲーム障害」という新しい精神疾患と認定しています。
これらの問題を未然防止するには、課金やゲーム時間の管理など、ネット利用のルールが不可欠です。また、子どもの安全を守るためにはボイスチャットの相手を同世代に限定し、個人情報は話させないことが大切です。子どもと話し合うためには保護者もYouTube等で子どもが好きなゲームの雰囲気だけでも見ておきましょう。
「親の気持ち」を子どもに受け入れてもらうためには、「(あなたは)…してはダメ」などのYouメッセージより、「(私は)・・・が心配」などのI(アイ)メッセージで話す方が効果的です。
2.保護者による管理を効果的に行う方法
子どものスマホ利用に対する保護者による管理をうまく行うには、まず、子どものスマホ利用の何が心配か、どこに安全設定をかけるかを考えます。管理したい内容は、
- 有害情報への接触
有害情報をシャットアウトするフィルタリング機能を利用する(携帯事業者が無料提供している“あんしんフィルター”など)
- 年齢不相応の性・暴力表現や反社会性
ゲームに付された「適性年齢(レーティング)」を確認する(A:全年齢、B:12歳以上 C:15歳以上 D:17歳以上 Z:18歳以上の5区分)
- ゲームにおける過度の課金
オンラインゲームは課金したくなる設計になっていることを子どもと共有する
- ネット依存
ネット依存防止にはスマホやゲーム機の見守り設定機能を活用する
などがあります。
しかし、最も重要なことは、心身の健康のためには十分に睡眠をとることや人とのコミュニケーションが欠かせないことを子どもに納得させ、親子で話し合ってルールを決め、それを親子で守ることです。
そのためには、夜は〇時まで、一日〇時間までなどの目標を子ども自身に宣言させて紙に書いて貼りだす、ゲームをやめるためのアイディアを子ども自身に考えさせる、お手伝いをしたらご褒美にゲーム時間10分など、子どもが自分から時間管理をするような工夫をすることです。そして、子どもがルールを守れた時はしっかり褒めてください。
また、子どもに暇な時間があるときは、オンラインゲームではなく、運動やお手伝いをしたり、家族と話をしたりするなど、リアルな体験やコミュニケーションをするように促しましょう。リアルな体験は道徳心や判断力を高め、子どもの自律を育みます。
(次号に続く)