ススキ(尾花)は、日本人の心にすみついている秋の代表的な花で、尾花が頭をたれ、陽に輝く姿が美しい。埼玉県長瀞町の臨済宗妙心寺派道光寺(長瀞七草寺の1つ)では、前住職の発案で、参拝客に「良い親になりましょう! 良い子を育てましょう!」というチラシを配布しています。
【警句!ダメな家庭の十ヶ条】
一、酔て言う 飯どきに言う 愚痴を言う
気分で叱る 罰を与える
一、夢かける 目立せたがる 良い子がる
家で良い子は よそで悪い子
一、やりなさい 親は動かず 子を使う
躾しつけと みんな押しつけ
一、バカな親 親の成績 棚に上げ
夫婦でしごく 欲の限りに
一、先生は なっちゃいないと 批判する
不満ぶつける 信じなくなる
一、我慢なく 夫婦別れに 子が迷う
子供取りあう 鍵っ子になる
一、子は親を 批判しながら 真似ながら
ひねくれても行く 曲っても行く
一、家の中 つまらないから 外に出る
夜遊びをする 悪事おぼえる
一、子育てを 手抜きするから 悪くなる
悔いる処か 子が憎くなる
一、 不自由な 思いは仮にもさせないと
愛の代りに 物で与える
「道光寺花園会」作成チラシから
ところで、皆さんは「毒親」という言葉をご存知でしょうか?
子どもを支配したり傷つけたりして、子どもにとって「毒」になる親のことで、スーザン・フォワード(心理療法士・作家)の『毒になる親 一生苦しむ子供』(原題は「TOXIC PARENTS」)がきっかけで生まれた俗語のようです。
「毒親」は、子どものこころに空白をつくり、そこにSNSの「悪魔の囁き」が忍び込んできます。2023年8月26日のNHKには「闇バイト」に引きずりこまれ犯罪に手を染めていく若者の実例を紹介していましたが、「ダメな家庭の十ヶ条」の夫婦仲の悪化、家の中がつまらない、子育ての手抜きなど、またコロナ禍での生活苦と孤独などが、子どもの健全なこころを蝕んでいきます。こうして「毒親」は、子どもの安全・安心の脅威となって、子どもを一生苦しめるのです。
前住職が発案された「警句!ダメな家庭の十ヶ条」のチラシは、親が変わるためのヒントを示しています。参拝の際に親の目に触れるよう具体例を示したことは素晴らしいと思います。だが、それは「親の問題」です。
では、親を選べない子は、どうすれば良いのでしょうか?
スーザン・フォワードは「ほとんどの人は理想的な子育てをされておらず、何らかの〝歪んだ思考パターン〞を身につけざるを得なかった環境にあるとし、現在の自分の苦境の原因が親にあると認識した時点から、あなた自身の(考えに基づく)行動が求められ、それは、あなた自身の責任でもある」と指摘しています。
「安全・安心は家庭から」と言いますが、家庭の中へ一歩踏み込むと、濃淡はあれ「『毒親と薬親(子どもに、毒の代わりに気づきの薬を与えこころを育てる親)』が混在する世界」というのが普通の姿ではないでしょうか?それ故に、「安全・安心」の創造の場としての「家庭」づくりの意義があると思います。
なお、オランダの諺には「ハウス(家)はお金で買えるが、ホーム(家庭)は買えない」とあります。
日本市民安全学会副会長 斎藤晃顕