~面白い看板がまちを明るくします~

【スイカ栽培で有名な熊本市郊外の10世帯ほどの小さな“まち”からの報告です】

嫁の実家の隣に、現在息子夫婦と高校3年生と中学2年生の孫が住んでいます。世帯数は少ないのですが、近隣の各家とも車を数台持っており、通勤や農作業のため、狭い生活道路を頻繁に行き来するなど、意外と交通量の多い処です。息子夫妻がここに住み始めたのは、京都生まれの上の子が3歳の時でした。よちよち歩きの孫が交通事故に合わないようにと、義父が、家の角に“飛び出し注意の看板”を立ててくれました。

看板の両面には、かわいい男の子と女の子の絵が描いてあり、その子供の姿が目立つので、住民の車の運転により注意をするようになったといいます。

この地区では、住民全てが普段から家族同然の付き合いをし、近くに共同墓地もあり、亡くなった方の20回忌や30回忌を地域住民が集まり、菩提寺のご住職を呼び法事をするほど、よく言われる「遠くの親戚より近くの他人」のように結束が固い地域となっております。したがって道で人に会えば、皆が誰にでも当たり前に“あいさつ”をし、『みんなでつくろう安全安心なまち』・『みんなで守ろう子どもの安全』の旗がまちの小さな三叉路にある看板に取り付けてあり、誰でも通る度に目に入ります。驚いたことに、久しぶりの訪問で、今までうっかりしていて見過ごしてきましたが、現在高校3年生の孫が3歳の時の“立て看板” が、現在も家の角に立っていました。それも、きれいに手入れがされているのです。

【被害者も加害者も出さないまち】

地域の安全の質は、住んでいる方々のまちへの思い、小さなことの積み重ねによる結果です。そして安全と安心をさらに継続させるには、地域の皆様の強い意思の結束力に比例してくるのではないでしょうか。ここまで孫たちが無事に成長できたのは、地元の皆様方による安全・安心の見守りを頂いたお陰と心から感謝している次第です。

看板
看板
自動車の速度別死亡事故の割合
学年別歩行中死者・重傷者数

警察庁によれば、幼児の対自動車などの死亡事故では、速度が10km/h以下である場合が全体の52.4%となっており、いわゆる生活道路での事故が非常に多くなっています(図1参照)。全年齢の割合分布と比較して低速での事故が圧倒的に多いことがわかります。また、小学生の歩行中の死者・重傷者数51.6%の小学生の1年、2年生が占めています(図2参照)。

(写真・文 日本市民安全学会副会長 斎藤晃顕)