[主催]日本市民安全学会

2020年5月23日

新型コロナウイルスの感染防止のため、日本市民安全学会2019年度総会が開催できず、今回はオンラインによる模擬総会が行われました。正式な総会は11月に予定されていますが、それまでの間の学会運営のため、決定しなければならない事項について協議がなされました。冒頭、石附弘会長から、「第2期スタートと今後の方向性」と題して説明がありました。日本市民安全学会ならではの特長を生かし、インターネット時代を見据えた学会運営に再構築するため、会則改正や人事刷新について説明していただきました。主な変更点は、総務局の新設、副会長を細分化して8名とすることなどが示されました。その後、総会記念行事「コロナ情勢と市民安全を考える」が開催されました。

1. 基調講演:コロナ情勢に思う(京都産業大学名誉教授 藤岡一郎氏

日本市民安全学会の第2期のスタートに当たり、これまでの”市民安全”から、”世界市民”もしくは”宇宙市民”としてのグローバルな視点を持つことが大切ではないかと思われます。過去にペストが流行した時代がありましたが、今回のコロナ禍では人間そのもののあり方、資本主義のあり方を考える時といえます。第2期のスタートとして、まずはベースラインをどのように設定するかを再認識する必要があるのではないでしょうか。モノからコトへの変革をすすめる上でも、学会員のみなさんと、安全、安心、安楽を考えていければと思います。

2. ワークショップ:コロナ情勢と市民安全

2-1. 公衆衛生危機としてのコロナ情勢(東海大学医学部公衆衛生学客員教授 渡辺良久氏)

コロナウイルスは近くの人との接触および飛沫により多くの場合は感染すると言われています。しかし、米CDCの発表によると、同じ室内ではあるものの離れていても感染した事例というのが示されています。エアコンの気流に乗ってウイルスが飛散してしまうことがあります。空気感染とまでは行かないまでも、飛沫が拡散することで広い空間でも感染する可能性が示されています。コロナウイルスは中国から世界に拡大していますが、現状では型が変異した欧州型や米国型が広まっています。さらに、南米型が拡大する可能性があります。コロナ禍での行動変容として、給付金等による介入による外発的動機づけで収束させようとしてきましたが、これからは自ら進んで生活様式を変え、習慣的な対応を行うことが重要と思われます。

2-2. コロナ情勢と教育~こどもの安全~(大阪教育大学教授 藤田大輔氏)

コロナ禍における学校での対応についてお話ししていただきました。緊急事態下における家庭学習において、大学ではオンライン授業を行っているところが多いものの、小学校や中学校、高校では、教科書や紙の教材を用いたり、テレビ放送の教材を用いたりするなどの手法がほとんどのようです。大学のような双方向のオンライン授業を行っているところは少ないとのことです。また、子どもたちのコンピュータの活用について、OECDが調査したものによると、コンピュータを使って宿題をすることは、OECDの平均22%に比べ、日本はわずか3%となっており、家庭学習での活用では世界水準から遅れを取っています。今後、社会が変化する中で、また緊急事態等が発生した場合でも対応可能な、新しい学び方を考えていくことが求められています。

2-3. コロナ情勢と地域コミュニティ活動(大阪府防犯協会連合会長 池崎守氏)

コロナ禍における地域活動についてお話ししていただきました。大きな行事については1年間中止することを決定したそうです。しかしながら、万が一の避難所開設の方法や、さまざまな情報の共有方法について若い世代を中心に検討を勧めているそうです。緊急事態下において、子どもたちの行動についての苦情も出ていますが、学校と地域、人と人が話し合いを持って問題を解決しており、双方の連携が大切と考えています。

2-4. コロナ情勢と自治会活動(北須磨団地自治会長 西内勝太郎氏)

北須磨団地の自治会館は閉館して、感染拡大防止に努めています。一方で、自治会や婦人会の会合やパトロールは継続しており、新聞発行を行い住民に向けた広報活動は行っています。三密を避けつつ、朝の散歩などではマスクをせずに深呼吸することの大切さも伝えています。また、日常の生活における、うがいや手洗いの励行についても、新しい生活様式を行いつつ継続するよう住民に伝えています。現在、夏のふるさと祭りを開催するか否かを検討しているところです。


会則改正や新しい人事が示され、学会の第2期スタートが良い形でできました。また、コロナ情勢を乗り切るための知恵が各界から集結し、日本市民安全学会らしいオンライン模擬総会となりました。