2020年7月18日(土)
[主催]日本市民安全学会
災害派遣等の自衛隊の活動について
自衛隊大阪地方協力本部長 陸将補 富崎隆志氏
近年の自然災害現場での自衛隊の活躍は、国民から高い評価と信頼を得ています。自衛隊の災害派遣等について、自衛隊大阪地方協力本部長、富崎隆志陸将補からご講演を頂くことができました。
災害派遣の出動は、都道府県知事等から、その地域を担任する陸上自衛隊の駐屯地司令等への災害派遣要請に基づいて行われます。そのため、日頃からの首長との連携が重要となっているようです。また、自衛隊の活動は、産業廃棄物除去や、トンコレラの対応、南海トラフ地震や首都直下地震などへの迅速な対応等々、誠に多岐に渡っています。全国部隊を集中しなければ、こうした大規模自然災害に対応することはできません。派遣計画を策定し、訓練を実施していることなど、自衛隊が取り組んでいる現状についてスライドや動画などにより、わかりやすく説明して頂きました。災害現場での活動、現場隊員の被災者に寄り添った姿勢等が国民の高い評価につながっていると思いました。
一方、地方協力本部は自衛官の募集業務を行っていますが、少子化や高学歴化などにより、募集環境は厳しく、初任給等の引き上げ、採用年齢の引き上げなどにより人材確保に努めているとのことでした。自衛官には多様な職域があり、その人の個性や能力に応じて活躍の場があるので、身近な人に関心のある人がいたら、近くの地方協力本部まで連絡頂きたいと締めくくられました。
看護の基本とソ-シャルディスタンス
「災害・テロ・戦争の後にニーズの高まる看護」
日本赤十字秋田看護大学 看護学部教授 山田典子氏
看護の基本は、”慈しみの心を持って見守ること”であり、また患者さんとのコミュニケーションを取る上で、話しやすい環境を作るために、さまざまな配慮をしているとのことです。今回は、コロナ禍における患者さんやご家族との心の通わせ方、さらに、外傷を伴う患者に対応する場合などの、法医学の観点からの看護のあり方についてご講演いただきました。コロナ禍において、スタンダードプリコーション(標準予防策)は重要なことではありますが、患者さんに不安を与えるようなことのないように、マスクやゴーグルや防護服といった装備品の意味についてしっかりと説明することも大切です。また、不安を持つ患者さんとのコミュニケーションを取る際に、「患者さん」ではなく名前で呼びかけたり、孤独感を和らげるために適度なタッチ(身体に触れる)を活用したり、話をする場合には、ゆっくりと聞いてあげるなどの工夫をするとのことです。
フォレンジック看護は、法医学の専門的知識を看護学に応用したもので、暴力や虐待を受けた患者に対応するため発展してきました。最近では法医学の観点が必要な患者さんも増えてきており、フォレンジック看護はすべての看護師に学んでほしい領域とのことです。また、災害などの後にも、フォレンジック看護師は重要であり、患者の身体に残る証拠を保存しつつ、いち早くケアに引き継ぐことが求められるとのことです。
最後に、昨今の新型コロナ情勢がもたらした健康課題として依存症についてお話ししていただきました。感染症の抑え込みはできたものの、社会経済活動と家族関係の課題として依存症の増加が予測されるとのことです。不安や不眠やうつなどとアルコール依存は関連があり、身体不調を軽視することなく、早期対応および介入は大切なようです。