2020年12月8日(火)
[主催]日本市民安全学会、ベイエリア連携の会
[内容]
令和二年度初頭より、国難である新型コロナウイルス感染症および市民生活への影響等についてオンラインでの研修会等を重ねて参りましたが、このたびリアル研修として、陸上自衛隊の感染症対策の専門部隊である「対特殊武器衛生隊」と、医学情報資料館である「彰古館」研修を実施しました。
・対特殊武器衛生隊 第1科長 山口貴史氏
対特殊武器衛生隊の概要と新型コロナウイルス対応における活動の概要、家族支援について、以下の趣旨の説明がありました。
対特殊武器衛生隊は、生物剤攻撃に対応する陸上自衛隊で唯一の専門部隊で、使用された生物剤の同定(種類や型を特定すること)や感染患者の応急治療を行います。隊は、医師・看護師を含む約90名で、生物剤対処用衛生検査ユニットや陰圧病室ユニットなどを装備しています。
新型コロナウイルス対応では、延べ125日間の災害派遣で、ダイヤモンドプリンセス号や成田・羽田空港等において検疫支援や健康管理支援などを行いました。派遣隊員の家族への支援については、長期の派遣による家族の負担や報道の影響、家族への風評などへの対策や共働き世帯を支えるための子育て支援など、きめ細やかな対応をしました。
・対特殊武器衛生隊長 101治療隊長 阿部信次郎氏
ダイヤモンドプリンセス号に派遣された阿部隊長から、派遣前に準備したこと、現場での活動や苦労したことなどについて、以下の内容を伺いました。
現場の活動では、PCR検査のための検体採取を実施しましたが、朝晩2回の情報共有会議を実施し関係者間の連携を図るとともに、感染予防のため、ヘアキャップ、フェイスシールド、N95マスク、防護衣や医療用ゴム手袋を装着し、これらの装備に触れる前後には手指のアルコール消毒を実施しました。
また、体力維持を考慮したシフト勤務、使用物品の個別化、全員の個室化、毎日2回の体温測定、感染者との動線分離などを行いました。この結果、派遣隊員から1名の感染者も出すことなく任務を完遂しました。
・防護衣等の着脱体験
対特殊武器衛生隊の隊員の皆さまの説明の後に、研修者全員で、防護衣の着脱を実体験しました。隊員から感染しないためのコツを教えていただきながらの体験で、日常生活でも活用できるところがあると思いました。
・「彰古館」研修
幕末から明治初期頃の医療器具や症例の記録絵など数多くの大変貴重な医学情報資料があり、広報援護室の鈴木英治氏から各時代の医療についての丁寧な解説を伺いました。特に、明治初期に洋画家の五姓田芳柳が書き残した神風連暴動時刀傷図は、「我が国の戦いでお互いを切り合うような刀傷はこれが最後になる」と記され、貴重な資料には刀傷が緻密な水彩画で描かれていました。また、日清戦争終結後に完成した世界最大級の広島の検疫所が、コレラの感染対策で大きな役割を果たしたことや、日清戦争での戦傷の初期の形成外科手術の記録、その他江戸末期から明治にかけての医療器具の数々など、約1時間の研修では足りないほど多くの貴重な資料が展示されていて、参加者からはまた来たいとの声も聞かれました。