メールマガジン「大地と光」Visionary(2022年1月25日)
昨年9月の研修会でご講演いただいた、弁護士の齋藤雅弘氏が執筆された書籍が、先日出版されました。大川小学校を襲った津波から10年。風化させてはいけないとの思いから、このタイミングで本書を世に送り出したとのことです。目次とあわせて御覧ください。
水底を掬う ~大川小学校津波被害事件に学ぶ~
河上正二 著 吉岡和弘 著 齋藤雅弘 著
信山社、ISBN:9784797285017
信山社のWebサイトの紹介文から:
民事の訴訟を託された2弁護士と、研究者の執筆による貴重な書。大川小学校を襲った大津波と国賠訴訟のリアルな体験から、ともに考えるために必読。水底に沈んで浮き上がることの出来なかった魂を、泥水をかき分け、この両手のひらに掬い上げたい。その一念で訴訟を闘い抜いた遺族の思いに、「法」は、「社会」は,事件とどう向き合うのか。社会がこの訴訟から新たに学ぶべきことは多い。はたして法は、遺族の心を救えるのか。一石を投じ、そして、ともに考える。
【目次】
◆第1章 「大川小学校津波被災事件」判決を読むために
- はじめに
- 予備的知識
- 判決文の構造
- 最高裁判所
- 仙台高裁判決の判断枠組み
- 日本社会における法の役割と限界
- 個人の責任とシステムや組織の責任
◆第2章 大川小学校国賠訴訟─津波被災事故における学校の設置,管理・運営者の組織的過失と責任
◇I その時,何が?
◇II 大川小国賠訴訟とは
- 本件地震発生後の状況
- なぜ訴訟に至ったのか
- 訴訟提起の決断─訴訟の意義と目的
◇III 大川小国賠訴訟の内容
- 事案の概要
- 1審の争点
- 1審の審理経過と本件訴訟の特徴
◇IV 1審判決の判断内容
- 1審の認定した国賠責任
- 事後的不法行為
- 1審判決の損害の認定
- 石巻市と宮城県の控訴と原告遺族らの控訴
- 1審判決の意義
◇V 控訴審の経緯と控訴審判決の内容
- 控訴審の経緯
- 控訴審の争点
- 平時における校長等の安全確保義務の懈怠の国賠法上の意義
- 本件安全確保義務について
- 本件安全確保義務の内容とその懈怠
- 本件安全確保義務の懈怠と児童の死亡等との因果関係について
- 控訴審における国賠責任の肯定
◇VI 上告審について
- 上告審の経緯と問題点
- 上告および上告受理申立て理由
◇VII 控訴審判決の意義
- 国賠訴訟における責任の判断枠組み
- 本件訴訟における裁判所の判断枠組みと法的意義
- 控訴審判決の学校防災上の意義
- 控訴審判決の射程と今後の展開
◇VIII 伝えたかったこと,伝えたいもの
- 本件訴訟で特筆すべき点
- 今後の取り組み
◆第3章 鼎談「大川小学校津波被災事件判決を考える」