メールマガジン「大地と光」Visionary(2022年9月8日)

学会会員の西岡徹氏(N コード管理協会)から、先日行われた研修会の要約版をいただきましたので、会員のみなさまに展開いたします。


市民の安全・安心のための位置情報のデジタル化
一般社団法人 N コード管理協会 事務局長 西岡徹

1. 既存座標の問題点と新たな座標の必要性

 近年、誰もがスマートフォンを常時携帯しSNSなどのツールを使って大量の情報を発信する時代となっています。

 この情報を効率的に処理するため、昨年デジタル庁も発足しました。ところが一般市民が利用する位置情報のデジタル化が進んでいません。そこでその原因がどこにあるかを探り、緯度経度をユニバーサルデザイン化した新たな座標系である“Nコード”を開発しました。

 多くの方の安全・安心に寄与し、さらにビジネス界における新たな事業展開の可能性を提案致します。なお、N コードは震災経験を有する兵庫県防災企画局に有効性が評価され、すでに兵庫県、大阪府下の多くの消防指令システムに採用されています。また全国航空消防防災協議会からも現在ある座標の中で最も優れた座標であると評価され、その他の公的機関での実績も多数あります。

2. N コードの構造と特長

 緯度経度には60進法という欠点があります。また、高緯度になるにつれて経度幅が狭くなり、経度と緯度の単位長さが違うために2点間の距離計算が簡単にできないという欠点もあります。そこで N コードは高緯度になるにつれて経度の幅と同じになる緯線に沿った線を引いて正方形メッシュを作っています。これを赤道を起点にして、北極および南極に向けて積み上げます。これにより2点間距離計算が簡単になり、全世界が図1のように文化圏ごとに分割され、特に欧米との競合にも耐えうる座標ができました。

 図1の6Aなどの各ブロック内は、100×100のユニットに分割されています。日本辺りの緯度では、図2のようにユニットサイズは約50km四方となっています。さらに、各ユニット内を、東西および南北を1万等分し、それぞれを4桁で示します。位置指定の際は、ブロック番号とユニット番号を省略し、計 8 桁の数字だけで約 5m 四方の精度で位置特定が可能となります。すなわちNコードは世界で初めて緯度経度を老若男女、障害者そして全世界の外国人も使えるようにユニバーサルデザイン化することができました。

3. N コードの実績とサポートシステム

 実績としては、先に示した通り、災害経験を有する自治体を中心に採用が進んでいます。そして当協会では Nコードの普及のために、誰もが利用して頂ける2つのツールを無料公開しています。1つは当協会のホームページの Nコード地図検索ページ(図 3)で、2つ目はスマホアプリ(図4)で、GPSで取得した緯度経度情報をNコードに変換して表示し、Nコードの利便性を適用したナビ機能やカメラ機能も有しており、災害時は勿論日常生活でも便利なツールとしてご利用いただけます。

4. Nコードの今後の展開と可能性

 位置情報は産業界でも基幹的重要情報ですが、現状では各企業が独自システムを構築しており他業種との情報共有ができません。もし位置情報が産業界だけでなく市民が日常使う位置情報も併せて統一されたなら、どんな改革が起き、どれだけの経済効果が生み出されるかを想像して下さい。Nコードはそんな世界の実現を目指しています。世界中で大規模自然災害が多発し全世界がこんな座標を必要としながら、他に競合座標が無いため実現不可能な目標ではないと考えています。

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