澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)所長
澤田 雅之
(日本市民安全学会 2026.9研修会から)
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、2024年に戦術面での大きな転機を迎えました。つまり、戦車や大砲を主戦力とする戦いから、攻撃用ドローンを主戦力とする戦いに変貌したのです。数億円の戦車と数十万円の攻撃用ドローンが一騎打ちしたとすれば、常に攻撃用ドローンが勝つようになったのです。あたかも、熊とスズメバチが一騎打ちするように、熊(戦車)はスズメバチ(攻撃用ドローン)に噛み付いたり引っ掻いたりすることができず、スズメバチに刺される一方となったのです。
侵攻を受けた2022年の当初、ウクライナ製民生用ドローンの年間生産数は数千機でした。しかも、その生産には、バッテリー等の主要部品の多くを中国製に依存していたのです。しかし、ウクライナの政府・軍・民間の総力を結集して軍用ドローン(偵察用・攻撃用・迎撃用)の開発と製造に努めた結果、ウクライナ製軍用ドローンの年間生産数は加速度的に増加して、2025年には数百万機を国内生産することができました。今日では、ウクライナは軍用ドローンの世界最大の生産国です。
このような軍用ドローンの大量生産と大量投入は、戦術面のみならず戦略面でも甚大な影響を及ぼしました。ロシアがウクライナとの「史上初の大規模なドローン戦」に勝利する見込みは、2026年の春以降、ほぼ潰えてしまったのです。
それゆえ、ウクライナでの戦いにおける「ドローンによる戦略と戦術のパラダイムシフト」の実態を把握した上で、我が国における防衛用ドローン(偵察用・攻撃用・迎撃用)の国内大量生産体制の構築に向けて、政府・自衛隊・民間の総力を結集していくことが喫緊の課題であると言えます。
ところが、我が国では、2025年時点の国内年間生産機数が、2022年時点と同水準の数千機に留まったままです。そこで、我が国は、2030年時点で約8万機の民生用ドローンを国内生産できる基盤を確保するとしています。しかし、この国内生産目標である8万機を達成できたとしても、今日のウクライナと比べて桁違いの低水準です。これでは、我が国がドローンの開発・製造における遅れを取り戻すことなど、到底期待できません。
それゆえ、我が国は、ドローン本体の開発・製造に軸足を置くのではなく、ドローンの生産に欠かせないバッテリー等の主要部品の開発・製造に軸足を置くべきです。なぜならば、ウクライナ、米国、台湾のように、ドローンの国内大量生産体制が既に整った国でも、バッテリー等のドローン用主要部品については、中国製を代替できる部品を求め続けているからです。我が国は、高品質な電気・機械部品を安価に大量生産する工業力に長けていたのであり、「メイド イン ジャパン」のブランド力は今日でもグローバルに通用します。
それゆえ、未だ潰えていない我が国ならではの工業力を活かして、ウクライナ等が必要としているドローン用主要部品の製造に的を絞って、年産数万個ではなく年産数百万個を目標として、輸出を主眼として取り組むことが肝要であると言えます。このようにして、国内にドローン用主要部品の巨大なサプライチェーンを構築することができれば、我が国がドローン本体を年間数百万機生産する体制を構築することも夢ではなくなるのです。

