〜環境・安全・安心・健康・暮らしからのアプローチ〜

2017年7月15日

[主催]日本市民安全学会
[後援]富山市・警察政策学会市民安全と地域の安全創造研究部会・交通事故総合分析センター・全国読売防犯協力会・全日本教職員連盟・富山県交通安全協会・富山県防犯協会・富山県暴力追放推進センター・とやま被害者支援センター・富山県安全運転管理者協会・富山市社会福祉協議会・富山県警友会・富山市交通指導員連絡協議会・富山市保護司会・青少年育成富山市民会議・富山市指導委員連絡協議会・富山県保護司会連合会・富山県読売防犯協力会(東部地区)・富山県教職員連盟・YKK AP(株)・日本セーフティプロモーション学会
[協賛]富山県トラック協会・北陸銀行・北陸電力・富山地方鉄道(株)・(株)映学社・生涯学習支援機構・(株)インテック・ハッソー(株)・北酸(株)・河上金物(株)・富山県警友会・富山信用金庫・青少年育成富山市民会議・五省会

[内容] 学会会長の石附弘氏と、今回の富山大会を全面的にバックアップしていただいた学会理事の能島統主氏の挨拶に続き、基調講演が行われました。

埼玉大学の久保田尚氏からは「通学路(交通事故)ビジョンゼロ戦略(新潟市事例)」と題して、子どもたちの通学路を安全に保つ試みが紹介されました。抜け道となっていた細い通学路では、自動車を通行止めにして、登下校時の安全を確保する事例や、ライジングボラードによる通行規制を実現する事例などが紹介されました。
 続いて、富山市長の森雅志氏からは「コンパクトシティ戦略によるとやま型都市経営の構築~公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり~」と題して、富山市のまちづくりについてお話ししていただきました。日本初のLRT(Light Rail Transit)を整備し、まちに出てきやすく滞在しやすい環境を構築したこと、中心市街地に子育て世代などが利用しやすい施設を作ったことなどにより、まちの活性化がなされたとのことでした。

その後、5つの分科会に分かれ、さまざまな角度から市民安全について議論がなされました。
第一分科会:「環境・意識」の変化と「安全・安心の創造」
第二分科会:高齢者の「移動の自由」と「安全・安心の創造」
第三分科会:犯罪や事故から子どもを守る「安全・安心空間の創造」
第四分科会:「超高齢社会の特性」と「安全・安心の創造」
第五分科会:「共生社会の暮らし」と「安全・安心の創造」

第一分科会では、社会がものすごいスピードで変化していく中で、市民生活が円滑に進んでいくための社会の仕組み、生活するうえでのリスクとその予防について議論がなされました。第二分科会では、家の中や庭、道路など、高齢者が移動する上でのバリアとその解決方法などについて議論されました。第三分科会では、犯罪から子どもを守るための取り組みについて、ソフト的手段、ハード的手段を交えてその対応策について議論が進みました。第四分科会では、超高齢社会を迎えた現状を踏まえ、健康に安全に安心して暮らせる社会の仕組みとその対応策としての地域連携について議論がなされました。第五分科会では、障がい者、犯罪被害者、犯罪からの矯正者、認知症の高齢者など、さまざまな人たちが社会を構成する中、寛容性や共感性が求められている現状把握とともに、共生社会の実現に向けた議論がなされました。
 最後に、学会副会長の藤岡一郎氏の全体を総括した挨拶をもって、富山大会の閉会となりました。


基調講演が熱く始まったこともあり、各分科会の議論が熱をもって進んでいった大会でした。世代を超え、また多面的に安全・安心を考える一日になりました。当日は、富山市を始め、富山大学の学生のみなさんにも協力していただき、スムーズな運営ができました。 翌日の7月16日には、学会有志のメンバーによって、富山市まちなか総合ケアセンターの視察が行われました。富山市の中心市街地活性化の施策の一つであり、とてもきれいで利用しやすそうな施設でした。


富山大会に際しての石附会長からのメッセージを付記します。

1 市民安全をめぐる最近の情勢変化についてのコメント
(1)交通安全のシンボル「信号機」を撤去、「ラウンドアバウト」登場の意味  
 人身事故の約6割が交差点近くで発生し、特に歩行者にとって交差点は「鬼門」。信号機設置は長く交通安全対策のシンボルでした。しかし、信号機の大量更新期の到来、3.11東日本題大震災時の停電(機能マヒ)、低炭素時代の到来(環境変化)、経済性(設置費用や管理費の削減)、交通事故の減少(安全性)、円滑性(車の流れ)確保などの諸ニーズや、交通秩序を地域住民の自律的交通秩序の形成に委ねるという先進的なラウンドアバウト(環状交差点)が登場し(H25.3、飯田市東和町交差点)、国も所要の法改正を行いました。これも超高齢社会への対応の1つとみることができます。

(2)「防・災」の「災」の大変化=「防」の中身・やり方を見直す必要
 近年の自然災害は、極端気象の例が示すとり局地的かつ経験のない態様のものが全国で発生しています。新たな災害情勢に対処するためには、これまでの①避難所避難(シェルタリング)に加え、②緊急時には自らの判断で「命を守る行動」(エヴァキュエーション)をとることが求められており、市民レベルのレジリエンス防災の普及が急がれる所以です。
(3)「防・犯」の「犯」の大変化=「防」の中身・やり方を見直す必要  
 財産犯罪(被害金額)において、長らく首位にあった「盗犯(泥棒)」が、近年、知能犯(オレオレ詐欺犯など)に地位を奪われ、この双方への暴力団関与が深まっている。では、これまでの防犯活動は、蔓延する詐欺犯(知能犯)にどれだけ有効な対策が取られていたでしょうか?高齢者や子どもの安全対策において、「『騙されない』人づくり・地域づくり」が急務と思います。
(4)「スピード」自体が脅威  
 これまでの交通事故・犯罪・災害に対する安全対策は、「スピードや加速度とう視点」を必ずしも意識しないものでした。他方、超高齢社会の進展やサイバー世界の変化のスピードは、われわれの想像をはるかに超えるもので、市民生活の新たな課題を生み出し既存の社会安全システムとのギャップが拡大しています。身近なところでは、津波や土石流のスピードに負けない逃げるスピードを身につけなければなりません。即ち、今や、「スピード」そのものを脅威として、安全対策の基軸に据えなければならないのではないかと考えています。